研究と教育の可能性を信じるママさんナース|大学院博士後期課程で学ぶ田村晴香さんにインタビュー!

看護職のキャリアは多様です。医療現場だけではなく、現場を支える教育や研究活動も必要です。今回は、大学院で看護職として研究に携わる、田村晴香さんを取材しました。研究職・教員・保健師など、看護に携わる者として、さまざまなキャリアを積むなかでの経験やその想いを伺いました。

今回の記事はこんな人におすすめ!

  • 大学院/進学について興味がある方!
  • 看護師としてのキャリアの幅を広げたい!
  • 看護についてもっと専門的に学びたい!

今回お話を伺ったのはこの方!

田村晴香(たむら・はるか)さん
現在、某大学の大学院博士後期課程でさまざまな研究をなさっている田村さん。
大学卒業後、大学院博士前期課程(修士課程)へ進学。その後、行政保健師や大学教員として働き、大学院博士後期課程へ進学。
今後は看護学の発展に携わりたいと、看護学博士号の取得に向け、日々研究活動に励んでいらっしゃいます。プライベートでは2児の母親として子育てに奮闘中です。

聞き手/野村 奈々子 文字起こし/あきこさん 編集/ハルさん

普段のお仕事や現在の活動について簡単に教えてください

田村晴香さん(以下、田村):現在は大学院の博士課程で研究に携わっています。またプライベートでは2児の母親として子育てに奮闘中です。

看護職を目指したきっかけを教えてください

田村:看護職を目指したのは高校生のときです。漠然と医療職(看護・助産)に興味がありました。ただ、看護師として病院でバリバリ働くことを目指していたわけではなく、「看護ならいろいろできそうだな」と思い、大学に進学しました。

ー大学に進学し、ギャップはありましたか?

田村:そうですね。周囲の学生は「幼いころから看護師になるのが夢です!」というような強い志しを持った子が多く、自分はついていけないと感じていました。
しかし、大学に進学し看護学を学び、自分の想像よりもずっと看護学が奥深いものだと知りました。例えば、看護理論を学んだ際には「看護はこんなに仕組み化されて行われているのか」ということに衝撃を受けました。高校生のときの「あたたかい」「優しい」などのイメージに留まらず、「看護は深い」と感じたのを覚えています。

ナイチンゲールの「看護覚え書」にあるように、看護師はひとりひとりの世話をするだけでなく、専門職として独立し科学的思考を持って必要な支援を行っている存在なのだと知りました。

学生時代はどのような看護学生でしたか?

田村:大学時代に学生が性の健康について保健指導をするサークルに所属していました。そのサークルは保健所のバックアップの下で運営されていて、実際に保健師さんたちに関わりながら自主グループ活動を実践しました。後にそれは「地域組織活動を支援する」という保健師の役割の一つであると理解できるのですが、地域住民のヘルスアップに繋げるために、自分たちはどう活動していくべきかと考えたことは、学生時代の貴重な経験です。

ー保健所のバックアップがあるサークルが存在するのですね!実践的ですね!

田村:健やか親子21の取り組みとして支援があったのですが、大学2年生のときにバックアップが終わってしまいました。自主グループとして独立、つまり自分たち学生主導で活動していくことになり、予算面や関係機関との調整、マンパワーや情報管理などあらゆる面での整備に直面しました。「継続するにはどのような方法があるのか」「持続可能な運営を行うにはどうすれば良いか」「これから保健師さんにどのように関わってもらえばよいか」などを考えるきっかけになりました。

現在に至るまでのキャリアを教えてください

田村:大学卒業時に看護師・保健師の免許を取得後、大学院に進学し、同時に行政保健師になりました。大学院卒業後は行政保健師として働き、大学教員としても勤めていました。その後、現在の博士課程に進学しています。

ー学生時代に理論に興味をもったというお話もされていましたが、大学院進学のきっかけはどのようなものだったのですか?

田村:きっかけは二つあります。一つは学生時代のサークルのなかで、「自分たちの活動や実践がどう評価されるか」に興味を持ちました。そして、研究や疫学・統計学を学んで、公衆衛生看護が適切な評価をされる方法を学びたいなと考えるようになりました。そうすることで、研究としてより多くの人に還元できるのではないかと思い、学びたいと思いました。

もう一つは実習がきっかけです。学生のときに、先生方の働きかけで学生がエンパワーメントされ大きく変化することを体感しました。「あのような先生になりたいな」と思う方に出会えたことは大きいです。いつか看護教育の道にも携わることができたら良いなと考えるようになりました。

そして大学3年生のときに教員になるにはどうしたら良いのかを調べたところ、基本的な条件として修士等の学位や現場経験が必要なことを知りました。「現場に出たい」「研究がしたい」という両方の思いがありとっても悩んだのですが進学を決めました。

ー実習での先生方とのエピソード、素敵ですね。大学院に進むうえで、「一度現場に出た方が良いのではないか?」という迷いはありませんでしたか?

田村:その迷いはありました。当時、大学院にストレートで行く人は少なく、大学院によっては「臨床経験がないと入学要件に当てはまらない」と、はっきり言われたこともありました。

ー大学院は、働きながら通う方も多いのですか?

田村:社会人枠もあり多かったです。経験を積んだうえでの進学もすごく良いことだと思います。
大学院では臨床現場での課題(クリニカルクエスチョン)を研究課題(リサーチクエスチョン)にしていくことが多いです。その点で臨床現場での経験が活かされるのですが、自分としてはサークルで保健師さんの活動を見るなかで課題だと考える部分を解決するために、もう少し勉強していきたいという思いがありました。そのことを指導教員の先生に相談したところ、受け入れてくださって、進学を決心しました。その先生との出会いも転機でした。実際に進学してみて、良かったなと感じています。

Alt="田村晴香"

(学生時代から行っている活動は、卒業して10年以上経つ現在も継続しています)

ー進学や研究が性に合っていたということですか?

田村:性に合っていたのもあるのかと思います。当時、ストレートで進学する人が少なかったので、同級生に看護師長さんや先輩看護師さん・看護教員の方が多く、一緒に授業を受けたり、ディスカッションしたりすることは、学ぶことばかりで大変面白かったのですが、自分の未熟さに向き合うこととなり辛かったことを覚えています。

また、大学のプログラムでいろいろな分野の方と出会い、国際的な活動のメンバーになり、研究アシスタントとして4か国に行く経験をしました。働きながらの進学ではなく、卒業後に進学し、若くアクティブだったからできたことかもしれません。

若いうちに経験したことがその後の人生に繋がるので、とても貴重な経験でした。特に女性は出産できる年齢は限られているので、いつ進学するべきなのかなど、ワークライフバランスについて悩むこともあるかと思います。私はそのような悩みのないタイミングで勉強や研究に没頭できたことはラッキーだったと思います。

ー海外に行くプログラムは働きながらだと難しいのではないかと思います。田村さんはそのような機会を余すことなく利用できたのですね。

田村:若い頃の経験は本当に貴重だと思います。その時に見聞きしたことが、その後の人生に大きく繋がっていきます。海外での活動は良い機会でした。

Alt="海外視察 看護師"

(海外視察では様々な地域の学校や病院、先住民の集落などあらゆる場所へ訪れて、そこに住む人々と話をし、公衆衛生の向上が人々の健康を守ることを実感しました)

田村さんの研究について教えてください

田村:現在は「ネット利用が健康にどう影響を与えるか」について研究しています。修士のときは「高校生のスマホ利用と健康問題」について研究しました。

スマホ利用時間の長い人が抑うつや不眠になりやすいなど、精神的な健康状態にも関係することが分かりました。当時はスマホが登場して間もなく、そのような知見が乏しい段階だったので、注目を浴び、海外の研究者の方から連絡をもらうこともありました。現在も多くの人に論文を読んでもらったり、引用されたりしています。今では当たり前のことも研究結果が積み重なってできた科学的根拠に基づくもので、その一端を担うことができたのではないかと思います。

ーなぜ上記のテーマを選んだのでしょうか。

田村:大学時代のサークルのなかで、養護教諭の方々と連携する機会が多くありました。スマートフォンの普及によりゲーム依存やネット中毒などが問題となり、生徒の変化に悩んでいる養護教諭が多いことを目の当たりにしました。自身や周囲の友人にも悩んでいる人もおり、研究課題としたいと思い、養護教諭の先生方に声をかけて協力施設を探して研究が実現することとなりました。

ー研究をするなかで、どのようなときにやりがいを感じますか。

田村:学術論文や学会発表として研究の成果が世に評価されることが一番嬉しいです。他にも研究助成金などの審査が通ったり、受賞したりするとさらに研究を発展させやすくなるので嬉しいです。その循環が研究の遂行に繋がると思います。また、研究で得られた知見を現場で紹介する機会も度々いただき、そのように現場へ還元していけることも嬉しいです。

(学会にて受賞した時の様子)

ー研究をして、切り開いていく感覚が楽しいのでしょうか?

田村:そうですね。あとは、勉強することがとても楽しいです。新しい学びや自分の知らない知識を得ることや、その知ったことを仲間内で共有し合うのも楽しいですね。最近では、研究に関する知識が少しずつ身につき、自分ができることが増えたり、学術論文などで示されていることが理解できたりする中で楽しいと感じるようになりました。研究の進め方や研究結果をディスカッションすることも楽しいですね。

ー田村さんが楽しんで研究なさっている姿に、研究の道を志している方も勇気づけられると思います。教育について感じていることはありますか?

田村:教員として学生と関わることができて、嬉しくもあり楽しいと感じています。教員という立場は責任感があり、その分自分の未熟さも感じるときもあります。

教員は自分のこれまでの主体的な働きを伝えられる場でもあると考えています。学生さんに、10代の妊婦さんで支援体制も充足しているとは言えない、これからの生活に不安を抱えている事例について「どうしたらこの方が安心して生活をしていけるか」と考えた経験を話すと、学生さんが自分ならどうするかを真摯に考えてディスカッションすることがありました。その際に必要となる知識や保健師の専門性についても検討したところ、学生自身の学習意欲にも繋がり主体的な学びとなっていました。自分の経験を生かせることがとても楽しいです。それと同時に自分自身も一生学び続けていく必要があると感じます。

今後チャレンジしていきたいことを教えてください

田村:看護学の発展に関わっていきたいと考えています。それが今のモチベーションです。

他の分野(例えば工学とか情報学)などと違い、看護学の研究は少し分かりにくいものだと思います。人と人との関わりである看護の現場では、言語化しづらいけど先輩の様子を見ながら経験を重ねて身に付けるようなスキルもあります。マニュアル化できるようなことばかりではなく、言葉で表現したり、体系化したりすることが難しい部分もあります。
そのようなことから、看護学は学問としてまだまだ未熟だという見方をされることも多いようです。言語化・概念化し、広く知られ渡ることで、より良い看護ができると考えています。それらが、構造化されると、多くの看護職に役立ててもらえると思います。

そのため、まずは博士号を取得したいと考えています。現場にも関わりながら、研究や教育を続け、知識や経験を積みながら、今後の自分のキャリアを考えたいと思います。看護学博士号を持った方のキャリアをみると、いろいろな分野で看護の視点を持ちながら、世界的に活躍している方もいます。活躍の場は無限大なので、広い視野を持っていたいと思います。

ー博士号を取得してから見える景色もありますね。研究はとても大事なことだと思います。子育てとの両立も大変かと思いますが、いかがですか?

田村:いちばん大事にしたいのは自分の健康と家族です。それがあっての仕事だと思います。
また、今のキャリアに対し、金銭面の心配をされることもありますが、私は「研究専念支援金」として生活費相当額の支給を受けています。これは、「次世代研究者挑戦的研究プログラム」という、国で将来を担う優秀な志ある博士後期課程学生を支援していく仕組みです。最近は日本も追いついてきましたが、アメリカなどでは以前からあるようです。他にも学費の減免や給付型奨学金など様々な支援制度があります。日本の研究力維持向上や能力開発のために若手研究者支援が進められつつあります。

ー研究職の分野ではキャリアや子育てに関して支援が進んでいるのでしょうか。

田村:そうですね、どんな分野でも子育てなどで悩むこともあると思います。研究職の先輩は、子連れで海外の学会へ参加していました。研究内容にもよりますが、自身で調整しやすいことや計画が立てやすいという点では研究職は融通が利きやすいかもしれませんね。

現役看護学生にメッセージをお願いします!

田村:目の前の課題に丁寧に向き合うなかで、道が開けてきたような感覚です。自分自身に制限をかけず、進みたい道に進んで良いんだよと伝えたいです。また、看護師として活躍するという道以外にも、さまざま選択肢があることを、頭の片隅に覚えていて欲しいと思います。

ー研究も人生も楽しんでいらっしゃる田村さんのお話しを伺い、私たちもハッピーな気持ちになりました!ありがとうございました!

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