「一般企業への転職が、選択肢にあってもいい」看護師が自由にキャリアを選ぶ手助けを|ゆうかさんにインタビュー!

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今回は、病棟看護師からコンサルティング業界に転職しながら、看護職のキャリアの選択肢を広げる取り組みを行うゆうかさんにお話を伺いました。学生時代からアクティブに動いてきたゆうかさん。看たまたちのチャレンジの参考になる部分も多いのではないでしょうか。ぜひご一読ください。

聞き手/野村 奈々子  編集/いとみほ

今回の記事はこんな人におすすめ!

  • 臨床の看護師以外の働き方に興味がある
  • 看護や医療以外の情報を得る方法を知りたい
  • 大学院への進学を検討している

今回インタビューさせていただいたのはこの方!

ゆうかさん
ゆうかさん
大学卒業後、大学院に進学し、公衆衛生や医療経営・管理を学ぶ。大学院卒業後、都内の大学病院で看護師として5年半勤務しながら、キャリアに関心のある看護師さんのコミュニティ「ArchNurse」の運営に携わる。現在はコンサルティング業界に転職。個人で看護師から企業転職を目指す方や大学院進学に悩む方を中心としたキャリア相談を含めた支援活動を行う。
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目次

看護職を目指したきっかけを教えてください

ゆうかさん(以下、ゆうか):中学時代の友人に「ゆうかに話したらすごいスッキリする。カウンセラーになりなよ!」と言われ、人の心をサポートできる仕事に興味が沸き、最初はカウンセラーを目指していました。高校生の頃、英語劇の団体に所属し幅広く活動していく中で、風邪を引いて参加できない子を見て「自分のやりたいことをするためには健康がとても大事なんだな。」と感じたんです。心だけではなく身体のことも理解できる看護師になり、私がいたら安心だと思ってもらえる存在になりたいと思いました。

学生時代について教えてください

ゆうか:私は感受性が強くいわゆる「泣き虫」なのですが、私のような「泣き虫」な人でも生きやすい社会にしたいという想いがありました。大学では看護学生という視点で私が描く社会に繋げるために何ができるか考えた時に、性教育やライフプラン、コミュニケーションについて高校生や大学生にワークを通じて共に考える思春期ピアカウンセリングをしたいと思い、ピアカウンセリングコミュニティに所属しました。県や市の職員の方や学校教員の方と連携して活動を推進し、全国のピアカウンセリング団体を集めた総会の代表も務めました。

思春期ピアカウンセリングの意義を深く感じつつも、行政や学校が中心となる健康教育活動の限界や、ピアカウンセリング活動はボランティアのため、活動の質が学生のモチベーションにゆだねられている部分に疑問を感じるようになりました。行政頼りではないヘルスケアの在り方についてぼんやりと考えはじめた頃、大学の医学部初ベンチャー企業の社長さんから「行政には予算があるからどうしても限界が出てくるんだ。その限界を越えるのがビジネスの力だよ。継続的な仕組みを作るには、ビジネスとしてお金を循環させなければならない。医療者はもっとビジネスを学ぶべきだ。」という言葉をもらいました。この言葉をきっかけに、医療ビジネスや質の高い医療を提供し続ける仕組みを学びたいと考えるようになりました。大学院での座学だけでなくさまざまなビジネスコンテストへの出場や、人材やIT系の企業インターンにも参加し企業へのプレゼンやアプリ開発などにも挑戦しました。

ーゆうかさんの、看護や医療ではない情報の探し方を教えてください。

ゆうか:思春期ピアカウンセリング活動に役立つ知識を得ようとファシリテーションを学ぶ合宿に参加した時に他学部の方と交流しました。これが1つのきっかけになり医療以外のイベントやセミナーにたくさん参加し友人の輪が広がりました。学生生活は九州で過ごしたのですが、バイト代の多くは東京で開催される勉強会に参加するための遠征費に費やした気がします。医療系以外の方々と出会った際に「看護学生です!」と挨拶すると「なんで看護学生がここにいるの?」と興味を持ってくれます。自己紹介を繰り返す内に自己理解を深めることができました。またいろいろな方に会いにいき、話をするうち、どんどん「これに興味ない?」とお誘いいただく機会が増えました。

大学卒業後のキャリアについて教えてください

ゆうか:大学の先生との面談がきっかけで「きっとあなたは公衆衛生分野に興味があるから、あなたが望むなら今大学院に行ってみたら?」という言葉をもらい、大学院進学を考えました。当時は特に医療×ビジネス分野への関心が高かったので経営を中心に学ぶ選択肢も考えました。最終的には持続可能な医療の在り方を知り、医療政策や臨床を支える知識を得るために医療経営・管理学を専攻しました。

大学院卒業後は、都内の大学病院に就職しました。社会人2年目の夏から看護師と地域住民を繋ぐコミュニティの運営に携わり、子どもが医療者を怖がらないようにするためにナース服をきて親子で楽しい時間を過ごしてもらうイベントの企画や地域のお祭りに参加してレモネードを飲みつつ健康相談を受けれる屋台の運営、高齢者施設で看護師がハンドマッサージをする企画もしました。看護師が政治への関心を高められるように国会議事堂を訪問し政治家の方と交流する企画・運営等も担当し臨床だけでは得られない経験を重ねました。社会人3年目〜4年目にかけてシフトチェンジしたくなり、ヘルスケアリーダーシップ研究会(IHL)に参加しました。医師や製薬会社の30〜40代の方が参加されるような場で、アドバンスケアプランニング(ACP)という、人生の最終段階における意思決定支援に関する実態調査を行いました。

看護師として働くやりがいを教えてください

ゆうか:患者さんの人生の話を聞くのが好きでした。寝たきりでベッドの天井を見て過ごす時間の多い患者さんを車いすに移乗してラウンジに案内し「今日はあったかいですね。」と声をかけると、今まであまり話をしない方が「昔はカメラマンをしていてね。こんな景色がいい時に写真を撮ったことがあったな。」と昔話をしてくれたことがありました。このようにさまざまな想いを抱える患者さんに寄り添って、一瞬だけでも温かな気持ちを共有できることが看護師の私にとっての幸せの1つでした。

Alt="看護師 キャリア支援"また、私は時間が空いた時に患者さんの足浴や手浴等をするのが好きで、少しゆったりとした時間の中で私から患者さんにフランクな悩み相談をしていました。例えば「Aさんが住んでた●市に今度行くのですが、どこかオススメのお店はありますか?」といった相談です。相談を通じてコミュニケーションの中で患者さんの理解を深めるだけでなく、普段何かと「申し訳ない」という気持ちを抱きやすい患者さんに対して「ありがとうございます。とても助かりました!」と感謝を伝えると照れた顔をされるんです。そのお顔を見るのが好きでした。何か小さな頼み事や相談事をお願いして、私たちから患者さんに「ありがとう」と伝えるコミュニケーションを生み出すのは大切だと思います。

ArchNurseに関わるきっかけを教えてください

ゆうか:看護研究やリーダー業務、プリセプター、委員会運営等を経験し看護師5年目を迎えた頃、本格的にキャリアに向き合おうと考えるようになりました。大学院進学時点から企業で働く選択肢を持っていたものの、何から始めたらいいのか分からず、「キャリアに向き合うってこんなに大変なのか。」と思ったのを今でも強く覚えています。同時に看護師から企業への転職というややマイナーな選択をとる人達が繋がり、転職に関する悩みをみんなで考え、情報交換ができる場を作りたいという想いが芽生えました。そんなときに看護師のキャリアについて悩んでいる方が集まるArchNurseをTwitterで見つけ興味を持ち、運営に参画しました。

ー活動で大切にしていることはありますか?

ゆうか:「どんな場を作れば過去の自分が困らないか、不安にならないか。」という視点を大切にして行動をしています。例えば、高校時代は学校に居場所感が得られず漠然とした不安感があった経験を元に、大学時代には高校生や大学生の自己肯定感を育む活動に尽力しました。企業転職する際には転職エージェントという言葉さえ知らない状態から就活をはじめ、書類作成や面接対策を悩みながら1人で行った経験を元に、悩み相談ができる人や一緒に頑張ろうと思える人がいる場や関係性作りを目指しています。

転職先としてコンサル業界を選んだのはなぜですか。

Alt="看護師 キャリア"ー看護師として勤務しながら、ArchNurseの運営も、転職活動もされていたと思います。コンサルティング業界を選んだ決め手を教えてください。

ゆうか:仕組みづくりに関心があったことや、身につけたいスキル、いろいろな方からのアドバイスなどをふまえ、コンサルティング業界を選びました。医療系のコンサルティング会社は医療機関の支援または製薬に関する案件が多いのですが、より日本で持続可能な医療の提供を続けるために必要な課題解決を行い、公共・民間共にヘルスケアの支援ができる企業に魅力を感じ現在の会社を選びました。

コンサルティングは、誰も答えを持っていない課題を一緒に考え、より良い道筋をつくる仕事です。その手段として、調査・分析して資料としてまとめ、提案しています。困りごとに対して、一緒に考えたり、プランを提示したりする、ビジネス界の看護師だと思っています。

ー転職から6ヶ月ほど経った今、いかがですか。(取材当時: 2022年3月)

ゆうか:「分からないことばかりで大変!」と何度も感じました(笑)求められるスキルも全く違うので、看護業界での「大変」と、ビジネスの世界の「大変」の違いを感じています。また、リモートと出社が半々くらいなのですが、「ちょっとこれを確認したい」が看護師のように対面でする仕事とはちがいタイミングを掴みづらい点ではリモートワークの難しさも感じています。

一方で、私たちがリサーチ・提案したことが、実際に国の政策や企業の動きに繋がるので、日本のヘルスケアの一部を作っているという実感があります。何かが変わったその先にある、ヘルスケアサービスを受ける方や地域住民、患者さん、医療福祉職の方の顔が具体的に思い浮かぶことは、医療の現場にいた私の強みだと思います。

今後チャレンジしていきたいことを教えてください

ゆうか:今後は、看護師のキャリアの幅を広げていきたいです。臨床で働く看護師の存在はもちろん重要ですし、私自身看護師の仕事も大好きでした。一方で少子高齢化に伴う医療費の増大を一因に公的医療だけでは支えきれない現状に対してヘルスケア産業の発展は急務です。この現状に際して医療者がヘルスケア産業で価値を発揮し課題解決をする重要性が増すと考えています。同じ医療福祉業界のなかでの転職と並んで、一般企業への転職が看護師業界という生態系の中でより一般的に認知された生態系となって欲しいと思っています。

私が転職する際には、エージェントの人から「看護師からの転職は経験したことがない」と言われました。実際に、看護師が一般企業へ転職するためのノウハウを持っている人はあまり多くいません。また、看護学生時代には、自己分析や企業研究を経験することがほとんどありませんよね。いきなり、働きながら自己分析や企業研究を進めることは難しいと感じましたし、具体的な悩み相談ができないことや、一緒に頑張る人がいないことが苦しかったので、今年は「キャリア合宿」や「インターン」にチャレンジしています。

「キャリア合宿」では、キャリアチェンジをしたい看護師さんを対象に、キャリアと向き合う時間をしっかりとる機会として活用してもらおうと開催しました。非日常の空間で、自分の経験や今後のキャリアについていろいろな人にぶつけてみて、多角的に捉えるワークショップなどを行いました。参加者であり、「キャリア合宿」を開催する一番の動機になった方からは、「モヤモヤが晴れた」という言葉をもらい、開催してよかったと思いました。

「インターン」では、職務経歴書に書けるようなプロジェクトを経験することができます。チャレンジしたり、試行錯誤したりして何かをやり遂げるプロセスを短期間で経験するために、インターン参加者のみなさんにはセミナーの企画・運営や営業にチャレンジしていただいています。
一般企業に就職する際、看護業務以外に職務経歴書に書ける経験がないことが多く、転職活動の妨げになることがしばしばあります。また、パソコンスキルやビジネスマナーが分からないことで、不安に感じることも多くあります。インターンを通じて、ビジネスメールの書き方や資料作成を学んだり、集客にマーケティングの知識を重ねて一緒に考えたりしていくことで、何かをやりきり、経験を言語化する機会を届けています。

実は最近、大きな組織の方からも看護師のキャリア支援に関してお声かけいただきました。これからも看護師のキャリアの選択肢を拡げるために、チャレンジを続けていきたいとおもいます。

看護学生へメッセージをお願いします

ゆうか:興味が湧いたことにはなんでも積極的に取り組んでみて欲しいです。YouTubeの要約チャンネルを2倍速で3本見ても良いし、セミナーに行ってもいい。身近なことからやってみてください。
そして、チャレンジしたことに理由を後付けする癖をつけてみてください。やったことには絶対意味がありますし、意味なんて自分で作っていいと思います。例えば、ある本をなんとなく読み終わった後に「なんで私はこの本に興味があったんだろう。」と考えるんです。そんな思考の繰り返しに「自分が本当にやりたいこと」のヒントが隠れていることがあります。

また、学生だけで関わるのも楽しいですが、幅広い年齢の方々と関わってみると、自分の現在地が見えてきます。人生100年時代といわれるなかで20代の私が何をすべきなんだろうと、ぜひ考えてみて欲しいです。

ーーーゆうかさん、インタビューにご協力いただき、ありがとうございました!
仕組みで解決していく姿勢と、過去の自分を救ってやる!というモチベーションで活動し続ける姿がとてもかっこいいです。今後の活躍もお祈りしています!!!!

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