学生出産を経て助産師に。私だから伝えられる「性」の大切さ・櫻井裕子さんにインタビュー!

今回は、ご自身の過去の経験から、学校への出張授業や講演を通して「性」について若者に伝えている櫻井裕子さんにお話をお伺いしました。意図せぬ妊娠をきっかけに、助産師となった櫻井さん。助産師としてはもちろん、一人の女性としての生き方の部分でも、参考になる部分が多いのではないかと思います。ぜひご一読ください。

今回の記事はこんな人におすすめ!

  • 母性看護に興味がある人
  • 「性教育」に興味がある人
  • 助産師を目指している人
  • 女性のキャリア形成に悩んでいる人

今回インタビューにご協力いただいたのはこの方!

櫻井裕子さん

櫻井裕子(さくらい・ゆうこ)さん

新潟県出身。座右の銘は「起こった出来事すべてネタ」。
助産師/思春期保健相談士/日本思春期学会性教育認定講師。
看護師として病院勤務したのち、助産師学校に入学し助産師免許を取得。大学病院産科や産婦人科医院などでキャリアを積み、現在、地域母子保健事業、看護専門学校非常勤講師を務める傍ら、小中高大学生&保護者に性に関する講演やプレコンセプションケアについての講演を年間100回程度行っている。
目次

助産師を目指したきっかけを教えてください

櫻井裕子さん(以下、櫻井):きっかけは自分自身の妊娠・出産でした。小学校2年生からずっと一途に看護師になりたいと思っていて、最初は准看護師の資格が取れる学校に進学し、資格を取得しました。そして1年間准看護師として働きながら勉強し、21歳のとき、進学コースの看護専門学校に入りました。
しかし、やっと看護師に近づけたと意気揚々と進学したのに、その年に妊娠してしまったのです。「しくじった」と思いました。自分自身が妊娠を受け入れることができず、出来ればそのまま静かに流れていってもらいたいとすら思っていました。体育があったので、わざわざバレーボールに当たりに行ったり、階段から飛び降りたりと、かなり無茶をしてしまいました。
妊娠人工中絶をしようと産婦人科に行ったものの、「学生だし、うめっこないでしょ。特別に日曜日にやってあげるから、10万円持って裏から入ってきな」と病院の先生に言われてしまいました。今思えば、先生は産まない選択肢を言い出しづらいだろう、と気を利かせてくれたのかもしれません。ただ、その時はとにかくショックで、腹が立ちました。「産めっこない」と言われて、反発するように「学生でも産んでやるよ」と思い、妊娠の継続を決めました。

ある時、妊婦健診で受診した産院の助産師さんが「おめでとう!」と言ってくれたんです。学校では学業を一旦休むことなどでぶつかりましたし、周りからはそもそもおめでとうと言われなかった場面もありました。
助産師さんからの、無条件の「おめでとう」に救われ、助産師になろうと決意しました。助産師になるために、まずは今通っている看護学校を頑張ろうと思いました。そこからはひたむきに勉強しました。子育てを手伝ってくれる人は周囲にいなかったので、子どもは保育園に預けながら。学校も歓迎しておらず、まわりは冷たかった。でもそれが逆に自分には合っていたと思います。

「性」の講演を始めたきっかけを教えてください

櫻井:学生で子供を産んでからしばらくして、「学生出産」をテーマにした記事の取材に応じました。そこで「日本は避妊教育が不十分で、無知なために妊娠してしまう」とコメントをしました。しかし、当時の自分は無知ではありませんでした。自分は避妊や妊娠の仕組みについて知っていたけど、知っていただけで自分ごとではなかったんです。
性に関することを、他人事ではなく、自分のこととして考えてもらうことが必要だと考え、性教育に関心をもって活動し始めました。去年度で講演は103回、今年はもう少し増えるかもしれない。自分のことは『性教育オタク』だと思っています。

ー講演をされる中で、幸せな瞬間はありますか?

櫻井:今日は美容学生に講義してきたのですが、聞いてくれた子たちが嬉しそうでした。最初はめちゃめちゃ恥ずかしそうにして、「試供品のコンドームがあるからあげる」といってももらわない子が多いんです。それでも最後は欲しくて群がっている。分かりやすい行動変容を目の当たりにすることが嬉しいです。「面白かったです」「安心しました」と反応をいただけることがすごく幸せです。小さなアガる瞬間がたくさんあります。助産師として産後ケアを行っていても肯定的な感想をいただけることが幸せですね。

ー学生さんに自分ごととして捉えてもらうことは大変だと思います。仕掛けや工夫を教えてください。

櫻井:実際に関わった事例を入れて話します。中学生だったら、中学生ですでに出産している子がいたり、妊娠している子がいたりすることを伝えます。中学生は妊娠に関して他人事であることが多いんです。それはネガティブなメッセージではなく、実際に支援した子には頑張っている子たちが多くいるので、それを伝えたい。もちろん出産によって自由がなくなることもしっかりと伝えます。

助産師になってから現在までのキャリアを教えてください

櫻井:4年前まで、自宅出産をする方を対象に助産師をしていました。今はお産はやめていて、行政の産後ケア訪問(赤ちゃん訪問、おっぱいケア訪問、養育支援事業)や、非常勤講師、包括的性教育を行っています。

また、「#つながるBook」の発行にも携わっています。これは厚労科研で作った冊子です。全国の高校生に配りたいと思っているものの、予算の都合でまだ実現出来ていません。自分でダウンロードもできるので、広めていきたいと思っています。さらに、「はじめてキット」も制作しています。これは性的な関係を結ぶ前にいろいろなことを知ってもらいたいと作ったものです。

助産師や母性看護の魅力を教えてください

櫻井:人の赤ちゃんの成長はすごい。すくすくと赤ちゃんが育っていくのを身近で見ることができるのは助産師の良さだと思っています。また、子どもの成長を一番喜ぶのがお母さんだと思いますが、お母さんが幸せそうだと幸せなのが私たち助産師です。人間の赤ちゃんは一人では育つ事ができないし、一人では子育てができません。その傍らでそれをサポートするのは、助産師の喜びだと思います。
また、ほかの科は病気を治そうとしている人たちが対象であるのに対して、母性は困難を抱えている人も対象ですが、おおむね健康で自立した人たちを援助します。仕事の大半が見守りや安心感を与えることであり、その人が探し出したその人なりの正解を選んでもらうことが助産師や母性看護の魅力だと思います。

ー助産師の仕事で大変なことはありますか?

櫻井:お産は拘束時間が長くいつ始まるか分からないし、必ず無事に生まれるわけではなかったので、大変さもありました。心は大丈夫な方ですが、自分の取り上げた赤ちゃんが生後2週間で亡くなったときにはさすがに何年も引きずりました。しかし、険しい道のりのなか、どうしても助産師になりたかったので、どんなに大変なことがあっても助産師として仕事ができることの幸せが勝っています。

最後に、助産師を目指している学生へメッセージをお願いします

櫻井:「起こった出来事すべてネタ!」です。ちょっと遠回りしたり、しくじったりすることもあると思いますが、しんどいなと思うことも含めて、体験をすればするだけ、いろんな人に伝えることができる。「あれがあったから今の自分があるんだ」と思えると思います。助産学生さんも、看護学生さんも、学生のうちに打ちのめされてみてください!こんなに多くの人に評価されて、ちょっと叩かれるのも学生だけなので!
また、「助産師 櫻井裕子」で検索してみてください。Twitterインスタもやっています。ブログは毎日更新しているのでよかったらぜひ見てみて下さい。

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