読書の秋にちなみ、看たまたちから募った図書5作をご紹介します。看護の在り方についてじっくりと考えることができそうな小説やルポタージュが集まりました。勉強やアルバイトで忙しい日常を送る「看たま」たちの気分転換に役立ったらうれしいです。
1、「日本で老いて死ぬということ」朝日新聞 迫る2025ショック取材班
神奈川版で老いの現場を見つめました。超高齢社会にどう立ち向かうか、熱い取り組みが続いています。「日本で老いて死ぬということ」。重版出来!https://t.co/JxU6myNRAh pic.twitter.com/uWNHF1aEcS
— 朝日新聞横浜総局 (@asahi_yokohama) December 8, 2016
- 2025年になると、全国に約650万人いる「団塊の世代(1947~49年生まれ)」が75歳以上となり、特に都市部で医療・介護が追い付かなくなると言われています。
本作では、この「2025年問題」に危機感を抱く記者たちが、全国の現状や先進的な取り組みを丹念に取材。平穏な在宅死を迎えることの難しさ、介護の現実、クリニックや自治体などの動きに迫っています。 - 朝日新聞社の取材班によるルポ。2025年に多死社会を迎える日本で、どのようなことが問題となっているのか、これからどうしていけると良いのか示唆に富んだ内容。日本で起きているあらゆる医療福祉に関する社会的課題を網羅できる内容です!そして意外と読みやすい!
2、「風たちぬ」堀辰雄
【 #日めくりよまにゃ 】
今日は #堀辰雄 さんの #誕生日。
彼は結核を患っていて軽井沢で療養していたんだ。そこを舞台にした作品をいくつも書いているね。
「#風立ちぬ」#よまにゃ https://t.co/skKBR5TL8H pic.twitter.com/xUE8HdC7mZ— 集英社文庫 (@shueishabunko) December 27, 2019
- 美しい夏の軽井沢で偶然にも出会った主人公の「私」と節子。2人はやがて婚約しますが、フィアンセの節子は結核に冒されて、次第にベッド上で静かに過ごす時間が増えていきます。
出会いから1年半後。結核の治療をするために、2人は富士見高原のサナトリウム(結核療養所)に移り住みます。「私」は、節子に死が近づいていることに混乱しながらも、残された限りある時間を幸せに過ごそうと決意します。 - 「結核」は、昔は治らない病気と恐れられて日本人の死の原因のワースト10に入っていました。しばらく感染者が後を絶たない状態が続いていましたが、今年の8月末、日本はWHOの分類でようやく「低蔓延国」になったそうですね。そんなニュースを読んで、「風たちぬ」を思い出しました。
印象に残っているのが、サナトリウムに結核を患う節子と移り住んだ主人公が、院内で起こるさまざまな出来事に気をもむ姿です。主人公は、院内で1番病状が悪いと言われている患者の姿を確認しては、「まだ節子は1番悪いわけではないんだ」と、ほっとした気持ちになります。
主人公、節子、節子の父親との三角関係?もポイントです。主人公はサナトリウムで疑似的な新婚生活を築きつつありましたが、節子は父親を忘れられずに恋しく思います。主人公はこの事実に動揺します。
実際の患者さんのご家族も、医療を提供する側が思っている以上に、病院内で起こる出来事をつぶさにキャッチして、気持ちをすり減らしたり、思いを巡らせたりしているのかもしれませんね。
3、「紫式部日記」紫式部
💜好評発売中💜
『人生はあはれなり…紫式部日記』
小迎裕美子・著 @ComukaiYMK
平安系こじらせ女子、紫式部の超ネガティブ日記を、小迎裕美子さんがコミカライズ! 2024年大河の前に紫式部の日記を読んでみませんか?#大河ドラマ #光る君へ #紫式部https://t.co/XiBQI4Fmhl https://t.co/TY4v2pSHVP pic.twitter.com/euoce7uCRu— KADOKAWA学習参考書編集部(高校学参中心) (@kadokawagakusan) May 11, 2022
- 作者の紫式部が、一条天皇の正妻である「彰子」の出産記録などをまとめたものです。約1000年前のセレブの出産が、どのようなものだったのか分かって面白い。当時の出産・子育てが、いかに危険に満ちていたのかを知ることもできます。※漫画や現代語訳で読むのがおすすめ
- 当時、出血やケガは「忌々しくて不浄なもの」だと考えられていたので、彰子は夫のいる皇居から離れた場所で出産せねばなりませんでした。また、居宅の外には大勢のお坊さんが待機し、昼夜問わず、安産を祈るための読経をしていました。
世継ぎを生まなければならないというプレッシャーの中、夫と会えずに彰子も寂しかったかもしれません。お経が絶え間なく響き、リラックスできなかったでしょう。当時は最先端だったのかもしれませんが、今の考え方からすると、なかなか大変な環境です。
現在では妊婦さんが家族のサポートを得られやすいように調整して、検査や指導を重ねるのが基本ですよね。時代によって、お産の在り方はこんなにも変わるのだなと驚きました。
4、「戦争の悲しみ」バオ・ニン
『戦争の悲しみ』(めるくまーる) – 著者: バオ・ニン – 辻井 喬による書評 https://t.co/4HvjCKxdss (書評サイトALL REVIEWSより) pic.twitter.com/Pc1C48yi3J
— 羽田徹のキキミミ図書館 (@book_radio) May 25, 2019
- 主人公のキエンはベトナム戦争に従軍し、生きのびますが、苛酷な体験が心と体の両方に癒しがたい傷を残してしまいます。死んだ仲間たちとの思い出が、頭にこびりついて離れることがありません。戦争が終わった後、恋人で幼馴染だったフォンと11年ぶりに再会。かつては固い愛情で結ばれていた2人ですが、極限状況を体験した2人に愛は復活するのでしょうか。
- 戦争で心や体にダメージを負う若者たちの姿がリアルに書かれているので、読んでいてかなり気落ちしましたが、暴力で苦しむ人が増えたらいけないと強く思いました。ジャングルでの戦闘シーンは臨場感があり、兵士たちの息づかいや恐怖が伝わってきます。
恐ろしいのが、戦争が1人1人の生き方を大きく狂わせてしまう点です。戦後にキエンは大学へ行き、フォンと家族になろうとしました。しかし、心に強いトラウマを負うと、平和な生活に戻ったとしても、人生をより良いものにしようとすることが、そもそもできなくなってしまう。体が傷つくと行動が制限され、周囲の人とつながりにくくなってしまう。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)の概念は、ベトナム戦争の米軍帰還兵を研究して生まれたそうです。戦争だけではなく、事故、災害、虐待、性犯罪でもPTSDになりうるといわれており、意外と身近な病態。トラウマを負って苦しむ人に対し、どのようなケアができるのかと考えさせられました。
5、「おいしいごはんが食べられますように」高瀬隼子
今週の #ETV特集 「#芥川賞を読む。”正しさの時代”の向こうへ」
史上初 #芥川賞 の候補全員が女性に #高瀬隼子 #年森瑛 #山下紘加 #鈴木涼美 #小砂川チト 描いたのは時代を包む”空気”という怪物…漂流する魂。5作を読みながら私たちの世界の奥底へと潜り込む。朗読 #石橋菜津美 24(土)夜11時 #Eテレ pic.twitter.com/w7I0rq0LEJ— NHK「ETV特集」公式 (@nhk_Etoku) September 18, 2022
- 職場でうまくやっている二谷、皆が守りたくなる存在で料理上手な芦川、仕事ができてがんばり屋の押尾が織りなす物語。ままならない微妙な人間関係を「食べること」を通して描いています。第167芥川賞受賞作。
- 看護とはあまり関係ない本に思われるかもしれませんが、「みんなで食べることはよいこと」「手作りの健康的なご飯を食べなければならない」というような同調圧力を、自分が患者さんや他人にしてしまっているのではないか?と思わず振り返ってしまいました。
世間的に「正しい」とされている考え方があると、それにマッチしない人、異論を言う人が排除・攻撃されがちになる気がします。でも、「本当にそうなのかな?」と立ち止まって考えた方がいいのかもしれません。以前、在宅診療に同行させてもらった際、インフォームドコンセントの一部始終を見学させていただきましたが、正論ありきで進めるのはかなり危ないと感じました。読む人によって受け取り方が変わる内容なので、知り合いと意見交換しても面白いかも。
それから、どの職場でも起こりそうな微妙な人間関係が表現されていて、「ここに自分がいたら、どう立ち回るだろう」と想像してしまいます。チームで連携しながら仕事をするには、お互いを尊重し合える関係を同僚と築けた方がいいですよね。
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