【たまごのつぶやき】看護の道に進んで感じたギャップ

「あのとき寄り添ってくれた看護師さんのようになりたい」「自立して働きたい」――。憧れた看護の道だけれど、入学・入職後、どこか違和を感じてモヤモヤ。一方で、学校のカリキュラムや職場が想像と違っていてびっくりすることも…。現場で働く先輩や看護学生は、一体どのような「ギャップ」を感じ、どのように対処しているのか、話を聞いてみました。

本記事は、11月19日開催の「看たま交流会」の内容をまとめて完成させたものです。看護学生、看護師経験者ら8人が「看護の道を選んで感じたギャップ」をテーマに語り合いました。 

一足先に学校や職場の雰囲気を知ろうと、高校生も参加。「看護師として働きつつ、看護職をサポートする社会起業家になりたい」「医療ドラマのコード・ブルーを見て胸が熱くなったんです。患者さんから安心される看護師になりたい」と熱い思いが聞かれました。

目次

離職率の高さに問題意識

入職中に抱いた問題意識をきっかけに、一般企業に転職し、現在は学生のキャリア支援に携わるのが由佳さん(仮名)です。「高校生のとき、姉が病院で働く姿を見ていたので、大変だけどやりがいがある仕事だと感じていました。なので仕事内容は想像通りでしたね。先輩にも可愛がってもらいました」。

しかし、充実した日々を送る中で驚いたのが、離職率の高さでした。「みんなすぐに辞めていくんです。私は最初、病棟に配属されたのですが、1年以内に同期が退職・進学・異動してしました。残りが私1人になっちゃったんです」。

そして由佳さん自身も、学生時代は勉強や実習に追われるあまり、どんなふうに働きたいのか十分に考えていなかったと気づいたといいます。

由佳さん
みんな入職してからやっと、『自分ってどういう看護師になりたいんだっけ?』と考え始めるわけです。今は現場を離れていますが、今度はキャリア支援の立場から学生さんのためになる仕組みを作って、一緒に色んな働き方を探したいですね

手術室で感じた『私って看護をしているの?』

職歴13年のベテラン看護師、沙友里さん(仮名)には、オペ看(手術室看護師)の道に進んで強烈なギャップに直面した経験があります。「実は、どんな仕事内容なのか調べないまま、病棟で提供するような看護ができるのだろうと想像して、手術室を選んだんです…」。

「手術室では大学の勉強があまり役に立たず、『私は看護をしているの?』『私がやりたかったことをやれてる?』とすごく悩みました。患者さんとお話しする機会もないまま、とにかく手術の道具などを覚えました。

その後悩みながらも3年間働き、思い切って大学院へ。「私がギャップに思っていたことは何だったのかなと思って。それを研究したかったんです。自分が抱いてた違和感は、そんなにおかしいことじゃなかったと分かりました」。

そして卒業後に選んだのは、なんと、かつて苦しみを味わった手術室でした。しかし、「以前とは違って仕事が楽しくなりました」とにっこり。自分に何が足りなかったのか考えて、職場も吟味したからこそ、前向きに働けるようになったのだといいます。

沙友里さん
学生の皆さんには、もしも進路に悩んだら事前にしっかりと調べてほしいです。1人で悩んで『まぁ、いっか』と思いがちだけど、調べたり、知識のある人に相談したりするのが大事だなと思います。それから職場は病院だけでないというのは、ぜひ知ってほしいです!

現在は2度目の大学院生として、研究漬けの日々。「看護師は小学生の頃からの夢でしたが、実は先生にもなりたかったんです。看護系大学の先生になれたらいいなと思っています」と夢は尽きません。

就職活動で流した涙

「就活のとき、不安が凄すぎて泣いてしまうことがありました。エントリーシートを書こうとすると、めちゃくちゃ怖くなっちゃって。働いたら身も心も死ぬんじゃないかと悩みました」。

 就活での辛い出来事を明かしてくれたのが、大学4年生の絵里さん(仮名)です。

絵里さんはもともと、さまざまな年齢・状態の患者さんを支える看護師という仕事に憧れていました。その一方で、「職場には性格のきつい人が多そうだな。人間関係も大変そう」と、不安も感じていました。「本当に働けるのかな」と人知れず悩んでいたのです。

不安を助長させたのが、コロナ禍による実習時間の短縮でした。「大学は座学中心というか。知識と思考回路を身に着けて、技術は就職後に身に着ければいいというスタンスなんです。それなのに、コロナでさらに技術を学ぶ機会が減ってしまい、不完全燃焼みたいな気持ちになりました。もっと、体を動かして学ぶ授業があれば自信につながったのに …」。

しかし、苦しい絵里さんは状況を脱するために、自ら動き出しました。教員や就職支援課の職員と相談を重ね、目指していた病院ではなく、自身の志望や性格に合う病院を選ぶことにしたのです。
現在は就職も無事に決まり、身も心もすっかり立ち直った絵里さん。2月に迫った国家試験の勉強に励む日々です。

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学校生活で感じたあれこれ

恵里佳さん(3年生、仮名)は実習後、看護師の働き方のイメージが変わったといいます。「患者さんとしっかり会話できるのかなと思っていたんですけど、実際には忙しくて話をする時間がとれないんだなと分かりました」。
就職に対する考え方も大きく変化。「自分の通っている大学の付属病院ではなく、やりたい看護ができる病院を探したい」と考えるようになりました。

恵里佳さん
実習に行って、闘病生活の不安をそのまま表現する患者さんは少ないのだと実感しました。確かに私も小さい頃、不安があっても『注射が怖い』と言ったり、泣いたりはできませんでした。気軽に相談してもらえる看護師になりたいです!

看護師が活躍できる場の多さを知って驚いたというのが、沙耶さん(2年生、仮名)です。

「病棟でも働けるし、養護教諭、保健師、助産師、教員にもなれる。いろんな選択肢があるので、資格を生かせる別の仕事でもいいかなと思ってるんです」「友人は、みんな看護師になりたいわけでもないようです」と同学年の仲間たちの動向もチェック済みです。
「看護学生になったら自分の時間を持てないんだろうなと思っていましたが、意外にもやりたいことをできる時間もあるんですよ」と、進路について考えつつ、学生生活をしっかり満喫しています。

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まとめ

誰かに相談する大切さ

 事前に情報収集しても少なからず生じてしまう「ギャップ」。学生や経験者の方々からお話を伺ううちに、仕事内容や憧れではなく、自分の性格や強みを重視して職場を選ぶのも重要だと感じました。また、情報を集める際、自分とは異なる価値観の人の意見を聞くのも一つの手段かもしれません。

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