医療機関や施設では、24時間体制で入院患者や入所者を守るため、シフトを組んでいます。交代制勤務は、24時間を2つに分けた「二交代制」と「三交代制」があります。今回は、看護学生が就活前に知っておきたいポイントをご紹介します。

三交代制の施設のほうが多いが、二交代制が増加傾向
看護師の勤務形態を調査したデータがあります。
2021年度の調査では、三交代制を採用している施設は41.6%、二交代制を採用している施設は22.2%、二つを組み合わせて採用している施設が36.2%という結果でした。

2021年度夜勤実態調査結果をもとに作成:http://irouren.or.jp/news/6d6106ab03410c6d78f0387f294e8f87a4fd219f.pdf
しかし、徐々に二交代制を採用する施設は増えており、さらに新卒看護師の就職先として多い大きな病院では二交代制を取り入れているところが多くあります。
両方のメリットとデメリットを理解しておきましょう。

二交代制
「日勤」と「夜勤」の二つに区切り、シフトが組まれます。
変則二交代勤務のシフトの例がこちら。
12時間ずつで区切るよりも、現在は日勤を8時間、夜勤を16時間に分ける「変則2交替制」を導入する病院が増加しています。
二交代制のメリット
- まとまった休養を取りやすく、生活リズムを作りやすい
- 夜勤の回数は少ない
- 平均夜勤回数は4.14回
二交代制のデメリット
- 1回の夜勤が長い
長時間夜勤における安全面と健康面でのリスクが指摘されています。
「二交代制」を行っている病院の夜勤時間(最も長い夜勤帯)は、「16時間 00分〜16時間59分」の割合が 60.3%で最も多いことが分かっています。 - 勤務計画が複雑(管理者)
- 夜勤明けの交通事故のリスクについての研究や報告があり、注意を要する
勤務時間が短くても注意が必要です。
参考)https://healthy-correction.com/risk-of-working-rotating-night-shifts/#toc6
Q.看護師さんの夜勤って、労働基準法にひっかからないの?
A. 変形労働時間制があるから違法ではない!
変形労働時間制は、一定期間(1ヶ月以内)で、平均して1週間あたりの所定労働時間が法定労働時間の範囲内であれば、「今日は10時間働いてもらうけど、明日は2時間早く帰っていいよ」と調整できる制度です。
長時間労働であっても残業にはあたらない、という見方をするとしんどそうに見えますが、この制度によって、24時間体制で患者さんの命を守る現場ならではの変則的なシフトが守られているんですね。
*変形労働時間制の適用には、労使の協定もしくは就業規則による定めが必要なので、これから働く職場が採用しているか確認してみましょう。
三交代制
「日勤・準夜勤・深夜勤」の3つの時間帯で区切り、シフトが組まれます。
三交代勤務のシフトの例がこちら。
三交代のメリット
- 8時間労働が守られる
- 勤務計画が立てやすい(管理者)
三交代のデメリット
- 夜勤明けの休みが短い
- 勤務パターンが複雑(労働者)
- 準夜勤と深夜勤の継ぎ目が深夜であるため、通勤帰宅に配慮が必要(管理者)
- 夜勤の日数が多い
平均夜勤日数は7.62日

夜勤・交代制勤務の実態を知ろう
長年、夜勤回数、勤務間隔の短さが問題となってきました。
労働に関する法律では、夜勤の回数や時間数の上限についての規制はなく、変形労働制によって1回の勤務時間も1日8時間を超えることが認められています。
また、三交代制のシフト例をみるとわかるように、夕方まで日勤で働いたあと、帰って夕飯・風呂を済ませて深夜勤に入る・・・・というシフトが組まれてしまうと、勤務間隔が短くなります。
不十分な休養は事故のリスクを高めるとして、日本看護協会は2013年に「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」を公表しました。
ガイドラインによる勤務編成の基準
項目 | 基準 |
---|---|
勤務間隔 | 最低11時間以上の間隔をあける |
勤務の拘束時間 | 拘束時間は13時間以内とする |
夜勤回数 | 三交代勤務は月8回以内を基本とし、それ以外の勤務は労働時間に応じた回数とする |
夜勤の連続回数 | 最大連続2回まで |
連続勤務日数 | 5日以内 |
休憩時間 | 夜勤時は1時間以上、日勤時は労働時間・労働負担に応じて適切な時間数を確保する。 |
夜勤時の仮眠時間 | 夜勤の途中で連続した仮眠時間を確保する |
夜勤後の休息(休日を含む) | 2回連続の夜勤後はおおむね48時間以上の休息を確保する。1回の夜勤後は24時間以上確保する。 |
週末の連続休日 | 少なくとも月1回は土曜・日曜ともに前後に夜勤のない休日をつくる |
交代の方向 | 正循環の交代周期とする |
早朝の始業時刻 | 早出の始業時刻は7時より前は避ける |
これにより、三交代制の病院では、できるだけ人間本来の身体のリズムにあった「生循環」(「日勤」→「準夜勤」→「深夜勤」の順に勤務開始時刻が遅くなる勤務編成)になるよう配慮することで身体の負担を軽減し、さらに勤務間隔を11時間以上あけられるよう工夫する病院が増えています。
変則二交代勤務の病院では、夜勤明けの日の翌日を休日とすることで、次の出勤までに十分な休養がとれるよう配慮する病院も多くあります。
知っておこう!36(サブロク)協定
労働基準法では、法定労働時間を超えた勤務や法定休日に勤務を命じる場合に、その旨を就業規則に定め、労働者の代表と書面上で協定を結び、労働基準監督署に届け出る義務が定められています。この協定を36(サブロク)協定といいます。
36協定の項目
- 時間外または休日の労働をさせる必要のある具体的な事由
- 労働対象者の業務、人数
- 1日についての延長時間のほか、1日を超え3ヶ月以内の期間および1年間についての延長時間
- 休日労働を行う日とその始業・就業時刻
- 有効期間
夜勤・交代制勤務の負担
日本看護協会の看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドラインでは、夜勤・交代制勤務の負担について、主に心身や生活に影響があることを指摘しています。
心身への負担
人間本来の睡眠・覚醒のリズムに逆らうことにより、睡眠の質が低下したり、疲労回復効果が十分に得られなかったりします。
- サーカディアンリズムに沿って昼間に体温が上昇するため、眠り続けにくい
- 体温の上昇によって、起きたときにだるさを感じやすい
- 昼間の睡眠にはレム睡眠が減るため、情動ストレスが解消されにくい&ノンレム睡眠とのバランスが悪くなる
生活上の負担
平日に休みが取れることがメリットにもなり得ますが、社会活動への参加がしにくくなることも問題点として挙げられます。
- 常日勤者は社会の8割を占めるため、社会参加が制約されてしまう
- 年齢を重ねると夜勤明けの回復に時間がかかり、日常生活に影響する
夜勤や交代勤務による負担を理解し、うまく付き合っていく方法を探していきましょう。
先輩看護師に聞いた、夜勤とのうまい付き合い方
先輩看護師Aさん:「起きるのが辛くなるので、仮眠を長く取りすぎないようにしています。」
先輩看護師Eさん:「仮眠は、1時間は絶対にとること。たまに午前中から遊びにいきます!」
先輩看護師Cさん:「夜勤中に『今日は落ち着いていますね』は禁句です!」
「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」でも、連続した休憩時間が推奨されています。少なくとも1時間、できれば2時間以上の仮眠を取れると良さそうです。少しの睡眠があるかないかで、覚醒度や注意力が変わります。すぐに眠りにつけない人も、横になるほうが良さそうです。
先輩看護師Bさん:「夜勤が終わったあとに寝過ぎないようにしています!遊ぶ♡」
先輩看護師Dさん:「昼まで寝て、しっかりご飯を食べて出勤しています。」
バランスのとれた食事や、適度な運動習慣は、交代制勤務を支えます。また、寝すぎることで、今度は夜の睡眠が妨げられては損した気分になりますよね。
二交代制か三交代制かによっても、夜勤後の過ごし方が変わってきそうです。
今回は、2022年11月開催のナースフェスの看たまノートブースにて、先輩看護師さんたちに回答いただいた結果をもとに作成しました。本当にご協力いただきありがとうございました!

二交代と三交代、どっちがいいのか
総じて、二交代勤務(変則二交代勤務)を導入する病院が増えています。
今回の記事では、以下のような特徴をご紹介しました。
二交代制:1回の勤務時間が長く、とくに年齢の高い看護師には負担になりやすいが、勤務間のインターバルが長く労働者の満足度が高い傾向にある。
三交代制:夜勤の回数が増え、勤務間のインターバルが短くなりやすいが、8時間労働が守られており、正循環でのシフト作成が浸透してきている。
それぞれのメリットとデメリットがあるので、自分の体にあった働き方を検討できると良さそうです。
看護師の勤務体制についての研究はいくつかされているので、ぜひ調べてみてくださいね。
参考資料
医療労働|2021年度夜勤実態調査結果:http://irouren.or.jp/news/6d6106ab03410c6d78f0387f294e8f87a4fd219f.pdf
日本看護協会「はたさぽ」:https://www.nurse.or.jp/home/publication/pdf/kakuho/2022/hatasapo.pdf
日本看護協会「看護職の健康と安全に配慮した労働安全衛生ガイドライン」:https://www.nurse.or.jp/nursing/shuroanzen/safety/hwp_guideline/pdf/news_201803.pdf
日本看護協会「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」:https://www.nurse.or.jp/home/publication/pdf/guideline/yakin_guideline.pdf
鹿児島労働局 労働基準部監督課「看護師等の雇用の質の向上のための研修会」:https://jsite.mhlw.go.jp/kagoshima-roudoukyoku/var/rev0/0110/2993/3.pdf
窪之内 麻未,中田 菜摘「3交替制勤務・2交替制勤務における職務満足度の比較」:file:///Users/nomurananako/Downloads/kitami.pdf
HealthyCollection「夜間労働者の健康と夜勤明け勤務の危険性について」:https://healthy-correction.com/risk-of-working-rotating-night-shifts/

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