2023年9月9日にちょっと変わったイベントを行いました。関連する事象を網目のように繋げて理解すれば、根拠がよく分かって、忘れにくいのではないかという発想から始まったイベントです。
子宮にできた腫瘍が原因で貧血!?心臓と腎臓ってめちゃくちゃ関連している!
本記事は、特定の知識をつけるというよりも、こんな考え方で調べ物をしたり記憶したりするのはどうですか?という提案として受け取っていただけたら嬉しいです。今回は貧血編です。


農学部卒の看護学生1年生です。人間の解剖生理学を勉強中。病態アセスメントにはAHAのPEARSがおすすめ
イベントの様子
当日の参加者は、このような付箋のジャムボードを提示され、それぞれの付箋(dots)がどう関連するのかを考えてもらいました。原虫で貧血……はて、なんでしょうね〜。
その結果がこちら。
みんなでわちゃわちゃ話しながらドットを打っていきました。
これをもう少し整理した関連図は、後ほどこの記事の中に出てきます。
例えば、『子宮筋腫になると月経過多になり、出血により鉄が失われると鉄欠乏性貧血になる』ということを知ったとします。そうしたら、月経出血に限らず、何か出血していたら貧血になり得るだろうと発想を飛ばすことは難くないと思います。鉄剤を内服して便が黒くなることがあるということを知っていれば、上部消化管出血で黒色便が出ることも理解できます。「あれ、なんで血液なのに赤くないの?」と思った方、素晴らしい。その疑問が持てれば、血便と下血の違いにたどり着けます。
このように、「貧血」と聞いただけで関連する言葉がたくさん思い浮かんで、関連性を説明できるという状態が、「貧血」について理解したという状態ではないでしょうか。
後日、文字ベースでのConnecting the dotsも試みました(作成者の趣味です^^;)。関連するものを….といってもどう発想を飛ばせばいいの?という人もいるかと思います。ヒントになるかもしれない考え方を示しておきます。
知識をつなげる考え方~貧血編~
貧血の原因
まず、貧血の原因として、『作るのが少ない』または『作ったけど分解される』という現象が考えられます。
それに関連した貧血の種類や原因疾患はなにかと考えると、下記のように分類することができます。
<作るのが少ない(黄疸は出ない)>
- 再生不良性貧血 造血幹細胞の異常より赤血球が作られなくなる
- 遺伝、自己免疫疾患(多発性骨髄腫など)、放射線など
- 鉄欠乏性貧血 赤血球の材料が少ないため小球性低色素性貧血となる
- 消化管出血、子宮筋腫による月経過多、成長期の鉄需要増加に伴う相対的欠乏、フェリチン(鉄を貯蔵するタンパク質)低値など
- 腎性貧血 腎不全によりエリスロポエチンが不足して赤血球産生が減る
<作ったけど分解される(ヘモグロビンが代謝され、間接ビリルビン値が高くなるため黄疸が出る)>
- 赤血球の奇形
- 感染症により赤血球が破壊される
- 自己免疫疾患により赤血球が破壊される
- 自己免疫性溶血性貧血 赤血球への自己抗体が作られる。クームス試験陽性
ポイント
- 赤血球と聞いたら、産生場所、増殖因子、分解器官、材料などが思い浮かぶようにする
→骨髄の造血幹細胞、エリスロポエチン、脾臓、鉄葉酸ビタミンB12 - 貧血の原因は、工場がポンコツ、命令が悪い、不良品を作っちゃうと分解される、材料が足りない
→貧血の細かい原因は色々あれど、大きく分ければ原因は2つしかない
さて、鉄やビタミンB12、葉酸などの栄養欠乏で貧血になることがあるんですね。
じゃあなんで栄養が少ないのか!発想を飛ばせますか?
『体内に入ってくる栄養が少ない』または、『体外に出ていってしまう』ことが考えられますね。
<体内に入ってくるのが少ない>
- ご飯を食べていない
- 摂食障害、味覚障害、偏食
- 消化管の機能障害
<体外にバンバン出ていく>
- 腎機能障害 尿中に栄養素がたくさん出てくる
- 全身性エリテマトーデス(SLE) 自己免疫疾患。腎臓は特に攻撃されやすい
- 肝機能障害 ビタミンや鉄などの栄養素が肝臓に貯蔵できなくなる
いかがでしょうか。次は、貧血が起きた結果、身体はどのような反応をするのか考えてみましょう。
貧血の結果
○○の結果を考える際のポイントは、『〇〇そのものによる症状』『〇〇の原因による症状』『〇〇を改善しようとして起こる反応』を軸に考えていくことです。まとめると…
- 貧血そのものにより起こる
- 倦怠感、肩こり、頭痛、眼瞼結膜蒼白など
- 貧血(酸素運搬量低下)を改善しようとして起こる反応
このように分類できますね。
ポイント
- 鉄は、ヘモグロビンやドーパミンの材料である
- 貧血そのものがすぐに改善できない場合、体は心拍出量を増やして酸素運搬量を増やす(代償作用)
- 通常、造血は骨髄で行うが、胎児では脾臓や肝臓で造血が行われている
- 骨髄病変によって貧血と高カルシウム血症は同時に起き得る
- 大人でも骨髄機能低下時に脾臓で造血することがある
繋げて理解ができていると、貧血と高カルシウムというよくわからない事態においても、赤血球は骨髄で作っているから何か関係あるかも!と思えます。
これらを踏まえて最終的に完成した貧血の関連図はこちら↓
上記の解説を簡略化したものですが、解説を踏まえて付け足したり、ご自身のわかりやすい形で書いてみてくださいね!
次回は、【血圧・脈拍編】です!
参考文献
MSDマニュアル(貧血の概要)
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/13-%E8%A1%80%E6%B6%B2%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%B2%A7%E8%A1%80/%E8%B2%A7%E8%A1%80%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81
(最終閲覧日:2023年12月25日)
コメント
コメント一覧 (1件)
[…] 貧血編と同様、このような付箋のジャムボードを提示され、それぞれの付箋(dots)がどう関連するのかを考えてもらいました。さて、今度はちょっと複雑。心臓と腎臓ってそんなに関係してましたっけ…….。 […]