Connecting the dots~解剖生理の知識をつなげてみよう~【血圧・脈拍編】

2023年9月9日にちょっと変わったイベントを行いました。関連する事象を網目のように繋げて理解すれば、根拠がよく分かって、忘れにくいのではないかという発想から始まったイベントです。
子宮にできた腫瘍が原因で貧血!?心臓と腎臓ってめちゃくちゃ関連している!
本記事は、特定の知識をつけるというよりも、こんな考え方で調べ物をしたり記憶したりするのはどうですか?という提案として受け取っていただけたら嬉しいです。今回は血圧・脈拍編です。

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中村
この記事を書いた人・中村

農学部卒の看護学生1年生です。人間の解剖生理学を勉強中。病態アセスメントにはAHAのPEARSがおすすめ:ピカピカ:

目次

イベントの様子

貧血編と同様、このような付箋のジャムボードを提示され、それぞれの付箋(dots)がどう関連するのかを考えてもらいました。さて、今度はちょっと複雑。心臓と腎臓ってそんなに関係してましたっけ…….。

その結果がこちら。
みんなでわちゃわちゃ話しながらドットを打っていきました。

これをもう少し整理した関連図は、後ほどこの記事の中に出てきます。

知識をつなげる考え方~血圧・脈拍編~

ここからは、知識をつなげていくための考え方をご紹介します。
血圧や脈拍の変動は、さまざまな臓器や体の反応と密接に関わってきますよね。例として、高血圧の原因を解剖学的に分類してみました。

高血圧の主な原因(解剖学的に分類)

血液 → 食塩の過剰摂取による水分貯留
血管 → 動脈硬化
神経 → 交感神経のα作用
腎臓 → レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系の賦活化
副腎 → アルドステロン症、褐色細胞腫
甲状腺 → 甲状腺機能亢進症(バセドウ病)

どうやら、腎臓や副腎、甲状腺、神経などと関連がありそうですね。

さらに、全身の血管は太さごとに分類することができ、太さごとに起きる血管炎が異なることも知っておくと考えやすいかもしれません。

血管(径による分類) 血管炎
大血管 高安動脈炎(高安病)
中小の血管 結節性多発動脈炎
毛細血管 顕微鏡的多発血管炎

結節性多発動脈炎の症状の一つに高血圧がありますが、実は腎臓が原因で起こります!

ここで、RAA系(レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系)の復習をしておきましょう。
腎臓が、腎動脈から流入してくる血液量の減少を感知するとレニンを分泌し、いくつかの段階を経て腎臓の尿細管と集合管でNaと水の再吸収が促進されて血圧が上がるのでした。

では、腎動脈に狭窄が起きたらどうでしょう。
全身の循環血液量の減少と、腎動脈のみの血流減少とを、腎臓は区別できないため、腎動脈に限局した血流低下であってもRAA系が賦活化します。結節性多発動脈炎で腎動脈の炎症により狭窄が起きると、腎臓は血流の低下を感知してレニンを過剰に分泌し、血圧が上昇します(腎性高血圧)。

高血圧状態が続くと、心臓は絶えず強い圧力に耐えねばならず、筋肉が肥厚してきます。すると、壁の肥厚した心室は容積が小さくなります。拡張期の容積が小さいため心拍出量が下がり、HFpEF(収縮機能の保たれた心不全)になります(一方、収縮能力の下がった心不全はHFrEFと言います)。

心不全とRAA系の悪循環により心不全は進行します。心不全では心拍出量が低下して血圧が下がると考えたくなりますが、実際には下がらないこともよくあります(ホメオスタシス)。RAA系(レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系)により血圧や循環血液量が上昇すると、ただでさえ悪い心臓にさらに負担がかかります。すると心拍出量が低下して、RAA系がさらに働き…….という悪循環に陥ります。

さてここで、みなさんに問題です。これらに共通性はあると思いますか?

  • 胸腔内圧の上昇→静脈還流量の低下
  • 大動脈圧の上昇→心筋の肥厚(後負荷
  • 頭蓋内圧の上昇→血圧上昇(クッシング徴候

流体は圧の高い方から低い方へと流れるのが物理のルールでした。では、その流れの下流において圧が上昇したらどうでしょう。流量が低下するか、あるいは流量が低下しないように体が頑張ってより強い圧を掛けるようになります。

怒責が頭蓋内圧亢進を助長することは看護師国家試験にも出ていました。ということは、脳外科で看護師をする際には排便コントロールが重要ということですね!

これらを踏まえて最終的に完成した貧血の関連図はこちら↓

その他の、今回触れていないドットの理解に関しては、可能性を狭めないようにするために、読者の方に委ねたいと思います。

「新生児で生理的に起こるチアノーゼ」「一酸化炭素中毒ではSpO₂100%」「貧血ではチアノーゼは出にくい」「妊婦にCPRをする際の子宮の左方移動」どんどん繋がっていきます。

まとめ

日々学校で新しい知識を吸収する際に、その場その場の理解ではなく、今まで自分自身が作り上げてきた知識体系との関連でまとめてみるのはいかがでしょうか。

一つ大きな島を作っておくと、そこを起点に多くのことを理解できます。心不全の症状の一つに低カリウム血症があることが知られていますが、筆者は心電図が好きなので、V1のS波とV5のR波を足して35mm以上、VAT延長、ストレイン型ST低下なら左室肥大あるかなぁ、低カリウムはQT延長、平坦Tだなぁ、ほな左室肥大を伴うHFpEFのQT延長ってもしかして!?と思いながら記憶しています。繋げておくと忘れないですよ^^

参考文献

MSDマニュアル(高血圧)

https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AB/04-%E5%BF%83%E8%A1%80%E7%AE%A1%E7%96%BE%E6%82%A3/%E9%AB%98%E8%A1%80%E5%9C%A7/%E9%AB%98%E8%A1%80%E5%9C%A7
(最終閲覧日:2024年1月09日)

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