『“ケア”とは何か?』模索し、体感する4日間【ちいここ合宿レポート】

2023年の夏、医療系学生のコミュニティ「ちいここ」と看たまノートのコラボ合宿を開催しました。今回は、『“ケア”とは何か?』という問いを模索するため、「ココロまち診療所」と「株式会社あおいけあ」にお伺いし、医学生と看護学生で普段の学校生活の中では見えていなかった医療や暮らしの現場に足を運んでみました。

~「ちいここ」とは~

『「地域と医療」のすべてがここにある』という意味の略称で、医療系学生のオンラインコミュニティです。オンラインの繋がりに留まらず、医療系学生を対象とした合宿やツアーや イベントを定期開催しています。

ちいここさんのTwitterはこちら👉https://mobile.twitter.com/chiicoco_iryou

目次

「ココロまち診療所」とは?

神奈川県藤沢市北部にある、自然に囲まれた診療所です。診療所は古民家をリノベーションし、敷地内には畑や花壇が広がり、患者さんはもちろんのこと、ご近所さんも出入りします。誰もが診療所に行くこと・働くことを「ココロまち」するような、居心地よい環境づくりを目指しています。

ココロまち診療所HP:https://cocoromatch-clinic.org/

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「株式会社あおいけあ」とは?

「認知症になっても住み慣れた環境のもと、穏やかに年を重ねたい。」
「命ある限り自分らしく生き、一人の価値のある人間として存在したい。」

そんな願いを実現できる、地域と密着したサービスを目指して、神奈川県藤沢市で高齢者向け福祉サービス、グループホーム・小規模多機能型居宅介護を提供されています。(参考:株式会社あおいけあHP)

株式会社あおいけあHP:https://aoicare.co.jp/ns/

合宿のスケジュール

1日目 メンバー集合

今回の合宿は医学生・看護学生あわせて5名で行いました。1日目は夕方ごろ宿泊所にメンバー集合し、オリエンテーションや次の日の準備を行いました。

2・3日目 ココロまち診療所への訪問・まち歩き

メンバーが二手に分かれて、ココロまち診療所への訪問と藤沢市のまち歩きを行いました。

ココロまち診療所では、外来診察と訪問看護への同行やアロマテラピー体験を行わせていただきました。まち歩きでは、「まちづくり、健康、医療などの視点から藤沢市を観察してみよう!」をミッションに掲げ、まちの人にお話を聞きました。

4日目 株式会社あおいけあへの訪問

あおいけあでは、施設を周り利用者さんの暮らしの様子をみながら、代表・加藤忠相さんにあおいけあで行われているケアのカタチ、実践されていることなどのお話をしていただきました。

そして後日、Zoomで合宿のメンバーがあつまり、振り返りを行いました。

参加メンバーに聞く「どうして合宿に参加したいと思ったか」

Sさん:臨床実習が始まる前に「ケアとは何か」ということを改めて考えておきたいと思ったからです。また、自分ひとりで考えるのでは机上の空論になりそうだと思い、実際に自分の目で見て感じたことを他者と共有することで学びを深めたかったため、合宿への参加を決めました。

Mさん:看護学生の実習は病院が主であるため、なかなか地域の中で行われているケアを見れる機会が少ないです。そこで病院のなかで看護師として行うケアと、病院以外の場所でで行われているケアには違いがあるのか、それぞれの特徴を活かし合える部分はあるのか学びたいと思い参加を決めました。

「ココロまち診療所」の訪問での学び・気づき

Tさん:1番印象に残ったのは「訪問診療の目的」です。病院での診療では「治療」を目標にしているのに対し、訪問診療では「これ以上悪くならないように」を目的としています。そのため、診療のアプローチも異なり、訪問診療では特に患者背景が重要となってくることが分かりました。患者背景を知ることで検査値異常の原因や症状の悪化などを治療することなく改善することもできます。なかには、薬が処方されているにも関わらず検査値に改善がみられない方がいましたが、患者本人とご家族からお話を聞いていると本当は薬を飲まずに棚の引き出しに隠していたことが発覚するようなケースもあるとのこと。このように患者背景からアプローチする診療こそが訪問診療の醍醐味にも感じた経験でした。

Yさん:午前中に訪問看護2件、午後にアロマ体験をさせていただきました。空き時間に診療所の見学や先生方とお話をさせていただきましたが、良い意味で自分の持っていた「診療所」のイメージをぶち壊してくれました。診療所の中に畑があったり、外で診察を行ったりする場所があり驚きました。また、訪問看護を見たのは今回が初めてで医師の診察とはまた違った角度から患者さんを支えられるという印象を感じました。アロマ体験では漢方やアロマ、ハーブなど多くの東洋医学や代替療法の考え方を知り、多職種連携や医療以外の視点を持つことの重要性を知りました。さらに、患者さんに東洋医学や代替療法を行おうと考える際には決して押し付けにならないように、患者さんの気持ちや考え方を最優先することの重要性も感じさせられました。

「株式会社あおいけあ」の訪問での学び・気づき

Sさん:「できること」を取り上げない支援の大切さを学びました。一方的になんでもやってあげることは単なる業務にすぎず、対象者の能力を削いでしまうことになりかねません。認知機能が低下したとしても、手続き記憶による「できること」は残存しています。力を発揮する環境があると自分は必要とされていると実感し、生きがいを持って生活できると教えていただきました。支援する者とそれを受ける者という関係性でなく、それぞれができることを行い、できないことを助けてもらうという関係性が理想的だと感じました。

Tさん:「あおいけあ」さんを見学させていただくまでは、介護士が利用者の手足となってお世話をする場のようなイメージを持っていました。しかし、今回代表・加藤さんのお話にあった「自分だったらどう思うか」という視点を大事にし、環境作りを行っていることを聞き、印象が大きく変わりました。高齢者であろうが、認知症であろうが、気持ちは私達と変わらない。過剰に気を遣われれば、申し訳感じ居心地も悪く感じる。「そこに居たい」「ここが自分の居場所」と思える場所にするため、スタッフと利用者が混在しお互い助け合い、「ありがとう」と感謝が飛び交うような環境作りを行っている点は特に心に残っています。ただ介護を行うことは「care」ではなく、一方通行なものでしかない。気にかけつつ一緒に支え合いながら生活することこそが「care」であり、介護施設で求められていることの1つであると考えるようになりました。

「まち歩き」での学び・気づき

Yさん:藤沢市のまちの風景を観察すると北の方は高齢者が多く、車社会である一方で、江の島や海の近辺では観光客で常に賑わい、住民以外にも様々な人が訪れる街だと感じ、同じ市の中でこんなに地域差があるのは珍しいなと思いました。また、辻堂のあたりが最近都市開発するなど、今後10年20年で街の雰囲気も変わる可能性があると感じました。

Sさん:まち歩きの際に「この場所に住んでいる人はどこへ買い物に行くのかな。どこへ受診するのかな」といった視点を持って取り組むことができました。藤沢市の南部は若い世代が多く、北部は高齢化が課題となっており、同じ市内でも特色が異なっていることもわかりました。住む人やその環境を知ることでこれまでと違った見方ができるとわかり、対象者を知る手段としてこの視点を今後も大切にしたいと思います。

『ケアとは何か?』についての自分なりの答え

Sさん:あおいけあの加藤さんから伺った「ケアとは気にかけること」という言葉が自分の中でしっくりきました。これから臨床実習に臨む上で学生の立場で何ができるだろうと考えていましたが、相手を気にかけることはできそうだと思えました。気にかけてもらえることで人は安心感を抱くことができ、それが力になると感じます。ケアとは医療や福祉の現場だけのものではなく、人と人との間で常に生み出すことができるものだと思いました。

Yさん:この3日間の合宿で、ケアについて深く考えさせられました。キュアを目指す医学と一方、治癒しきれない人を支えるのがケアだと思います。そのうえで、その人本人がやりたいこと望むことを理解し、それを支援するのがケアだと思います。その一方で、こちらが決して押し付けにならないように気をつけねばなるまい。これをやれば必ず良い!というものはなく、常にその人にとって必要なことは何か考え続けることが重要なのではないかと考えました。

Tさん:気にかけつつ、一緒に支え合いながら生活することこそが「care」であるというのが私の答えです。「あおいけあ」の加藤さんのお話にあった「CureとCareの違い」と「自分だったらどう思うか」を聞き、ただ介護するといった一方通行のものではなく、お互いに必要な存在になることで「自分が此処にいていいんだ、此処にいたい」と思え、社会の一部として今の生活を充実しておくることできるのではないかと考えるようになりました。

この合宿で学んだことをどのように活かしていきたいか

Sさん:来月より始まる臨床実習に向け、「患者さん自身」をみる姿勢を大切にしたいです。当然のことだとわかっていても、医療を学ぼうとしすぎるあまり「疾患」にフォーカスが当たりすぎてしまいパーソナリティや強み、維持している能力を見落としがちになってしまうと感じています。今回の実習で得た「ケアの本質は相手を気にかけること」という意識を常に持ち続けたいと思います。

Yさん:この合宿で多くのことを学べました。今後病院実習でこの学びを忘れずに、学んだことを実践していきたいです。また、疾患にとらわれず、一人の「人」として患者に対し何ができるか考え続けたいです。そのうえで、今回学んだアロマや東洋医学、訪問診療や介護の視点も大事にしたいです。

Tさん:今回の合宿テーマである「ケア」は介護の場面以外にも活かせるのではないかと思います。日常においても友達やバイト仲間などとの関係性においても「優しさ」からくる手助けであっても時に、それは相手側が自分自身を責めてしまうこともあります。相手の気持ちになって、自分であればどう思うかを良く考えた上で、寄り添ったり、時には頼ったりといったお互いに必要な存在に思えるような関係性を構築することを心掛けたいと思いました。あわよくば、このような考えの延長線上で普段と何も変わりなく介護にも取り組めるようになれたらいいなとも思いました。

ハル
「ちいここ」では、長期休暇を利用して、このような合宿が盛んにおこなわれています。InstagramTwitterをチェックしてみてくださいね!

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