「新卒訪問看護のキャリアって?」領域別看護 vol.1 訪問看護の魅力を聞かNight⭐️【イベントレポート】

Alt=“新卒訪問看護”

2022年6月10日、「領域別に看護を知る」シリーズの記念すべき第1弾を開催しました。イベントを通して、それぞれの領域の看護の仕事内容をはじめ、やりがい、難しいところなどなど気になるところを深堀して、それぞれのキャリアについて見つめ直します。

第一弾のテーマは「訪問看護」。「訪問看護師になりたいけど、新卒は少ないらしい…実際のところどうなんだろう。どういうことをするんだろう。」「実習に行けなかった領域の体験談を聞いて、これまで関心のなかったところに興味が湧くかもしれない!」という想いからできたイベントです。

このイベントレポートを読むと……

  • 実際の業務内容や訪問看護の基本
  • 授業や実習では聞けないようなこと
  • 訪問看護のキャリアの実際

を、知ることができます。それでは見ていきましょう!

目次

訪問看護とは

「疾病又は負傷により居宅において継続して療養を受ける状態にある者に対し、その者の居宅において看護師等による療養上の世話又は必要な診療の補助を行う。」(出典:厚生労働省)病院ではなく、居宅=患者さんの家や老人ホームなど日常生活を行う場で看護することがポイントです。

看護師として就業している人:約128万人
  病院:約88万人(全体の69%)
  訪問看護ステーション:約6万人(全体の4.9%)
  (出典:厚生労働省 令和2年衛生行政報告例)

このように、看護職の就業場所でみると、訪問看護師はまだ多くはありません。また、訪問看護の事業所数も利用者(受給者)数は増加傾向にあり、高齢化や病院の在院日数の短縮化の流れを受け、ますますニーズは高まるものと考えられます。

本日のゲスト

今回お話を伺った2名の現役訪問看護師の方をご紹介します。

齋藤 透(さいとう・とおる)さん

2021年1月に板橋区で訪問看護ステーションを立ち上げ、「その人らしく暮らせること」を当たり前にすべく活動中の訪問看護師さん。日本終末期ケア協会 アドバイザー、アップルパイ訪問看護ステーション管理者。

​​sho|みかづき藻なーしんぐさん

法学部を卒業し、在学中にスポーツトレーナーとして地域で活躍。その後公務員となるも地域で活躍したい想いはが消えず、ある時訪問看護師の仕事を知り、看護学校に進学。看護学校を卒業後は大阪府の訪問看護ステーションに新卒で就職。来年度の看護小規模多機能居宅介護の立ち上げに向け準備中!

訪問看護師に至るまでのキャリア

齊藤さん:ドラマ「コードブルー」を見て、救急かっこいいなぁと思って看護学校へ進みました。病院で3年間循環器を経験した後、看護師のキャリア支援をしたくて、看護師の人材紹介をする会社で1年ほど働いていました。その会社で訪問看護ステーションを立ち上げるという話が出てきて、携わってみたらとても面白くてどっぷり浸かっています。

​​shoさん:スポーツトレーナーをしていた頃はとても楽しく、地域で活躍したいと思っていましたが、公務員になってみてからはその思いが覚めてしまいました。「これは公務員やってる場合じゃない。地域で活躍するためにより専門性の高い職種で戻りたい。」と思い、訪問看護師になりたくて看護学校へ行きました。

病院と在宅の違い

齊藤さん:病院だとやることがいっぱいでスケジュールがびっちり詰まっていている一方、在宅だと一人の利用者さんと長く関われるので、時間の流れがゆっくりです。「体に傷ができた」「病気が見つかった」という時に病院だと、どうやって治すかという話になりやすい。在宅だと、「治す」以外に「病気と共に付き合っていく」という選択肢があります。80歳のおじいちゃんがいて、90歳まで生きられるかなぁという状況なら、病気を完全に治すよりは付き合っていった方がいいんじゃないか。糖尿病があって血糖コントロールをしないといけないんだけど、85歳だったらあんパン食べてもいいんじゃないか。病院だと多分叱られちゃうんですけど、ここが大きな違いだと思います。

訪問看護師としてのやりがいと難しさ

​​shoさん:特に印象に残っている利用者さんがいます。肺癌末期、全身に転移のある男性で、(医療用)麻薬も使っていました。急に容体が悪化し血を吐かれて、奥さんは動転してしまいました。奥さんからはもう限界だと言われ、在宅で看取ることは難しいと考えて先輩に相談したところ、「自宅で亡くなりたいのが本人の思い。奥さんの介護力なら看取りまで頑張れると思う。今頑張らないと亡くなった後に家族さんが後悔する。」というのが先輩の判断でした。後日、自宅で看取ることができました。ご家族からは「(先輩の)看護師さんに言われて冷たいなと思ったけれど、最後まで本人の意思を尊重して看取れてよかった。あの時諦めていたら一生後悔して人生歩んだと思う。」という言葉をいただき、自分の中でモヤモヤしていたものがスッキリしました。

本人の意思・家族の意思を、そのタイミングを踏まえて耳を傾けることが大事だと思います。本人の希望、家族の今後の人生に関わる仕事なのだと実感しました。亡くなられてからは、すごく暗い感じというよりはむしろ達成感がありました。死の話はタブー視されがちですが、人生のゴールだと思います。

家族への関わりで意識していること

齋藤さん:家族さんの介護負担を取ることも必要ですが、家族さんの役割を全部とってしまうとあまり良くないです。10きついところを、やり方を教えて2ぐらいにしてあげる。家族さんが継続的に介護をするのをサポートをするという視点があるといいと思います。

訪問看護にどんな人が向いていると思うか

​​shoさん:訪問看護に興味がある、やりたいっていうのが一番だと思います。自分も大規模なステーションでいろんな人と働いていて思うのが、訪問看護が好きで入った人と他の理由で入った人とでは、良い悪いとかではないですが利用者さんからの反応が違うなと感じました。
齋藤さんのあんパンの話で、病院は治療の場なのでダメなんですけど、訪問看護は生活の場なので、自分もあんパン食べても良いと思っています。ある程度のことは許せる人の方が訪問看護に向いていると思います。病棟のルールできっちりやってきた人で、訪問看護のやり方に馴染めない人も見たことがあります。自分は新卒から訪問看護でしたが、それが最善というわけではないし、やってみて気づくこともあると思うので、自分の気持ちに素直に生きてください。

近年の新卒訪問看護のキャリア

  1. 大規模訪問看護ステーション
    教育のための人や時間を確保しやすい
  2. 病院併設の訪問看護ステーション
    病棟を1年、ステーションを2年経験し独り立ちを目指すプログラムや、系列の病院に出向する形で技術を学ぶ体制を取っているステーションもあります。

新卒ではこの二つが主な選択肢になりそうです。小規模の訪問看護ステーションでも問い合わせてみると新卒を受け付けてくれる場合もあるようです。

​​shoさん:僕が所属しているステーションは大規模です。僕は病院の病棟看護師さんの研修や、ステーションの関連施設での研修に混ぜてもらいました。他には、先輩の訪問について行く「同行訪問」をして、ケアの多い利用者さんのところで先輩から教えてもらいました。摘便、採血、点滴、吸入、基本的なところは全て学びますが、病棟よりも回数が少ないので一回の経験で覚えるように頑張っていました。3ヶ月くらいでひとり立ちして、また少ししたら先輩に見てもらい、徐々にステップアップしています。

新卒訪問看護から病棟には戻れるのか

齋藤さん:新卒で訪問看護に行って3ヶ月でやめたら病棟の新人と一緒に教育してもらいながら戻れると思います。新卒1年間だったら病棟によると思います。どこまで看護技術ができるかによるのかな。探せば病院や企業で研修や勉強会もあるから少しづつ強みを増やしていけば戻れると思います。要するに自分で準備ができるかが重要です。
訪問看護を◯年間やっていましたと言われても、採用側はどれくらいできる子なのかイメージできないことが多いのではないでしょうか。

学生のうちに学んでおいた方がいいこと

​​shoさん:身だしなみや、名刺交換の仕方、靴の脱ぎ方、コートを脱いでから家に入る、電話の取り方などなど、社会人として必要なマナーですね。自分の看護学校では学びませんでした。外部の人と話す時に自分の会社の上司には敬称を付けないこととか、ついつい敬称付けちゃうので気を付けてます。訪問看護はメールやファックスでのやりとりも多いです。
また、看護以外に知っていることがたくさんあると利用者さんとの会話も弾むので、いっぱい旅行などしたらいいと思います。とにかく人生を楽しんでください!

参加者からの質問

Q. 訪問看護師になったときに重宝される資格はありますか。

齊藤さん:重宝される資格はあまり無いように思います。資格というよりも、専門性を深めて行くことで自分自身が訪問看護の可能性を広げていくという意味で、在宅看護専門看護師になる方法はあります。訪問看護師は看護師の5%しかいなくて、在宅看護専門看護師となると80人ちょっとくらいしかいないので、それを極めて講演やったり教科書書いたりとか目指してみるといいんじゃないかなぁと思っています。

もう一つは地域の有名人になることです。自分はこっちのルートなんですけど、地域の中には社会のために新しいこと、面白いことをやろうとしているいろんな職種の人がいて、そういう人たちの輪に入っていって、地域づくりのコンサルタントみたいなキャリアアップを目指していくのもいいんじゃないでしょうか。

Q. 保健師の資格を持って訪問看護をしている人はいますか。

shoさん:自分の周りにはいないんですけど、保健師も予防医学の知識を持って地域に密着してやっているので、すごく必要な知識だと思いますし、すごく良い考え方だなと思います。

齊藤さん:自分も周りにもあまりいないですね。産業保健師になりたいのであれば新卒でなった方が良いと思います。企業側は経験者が欲しくて、倍率も非常に高いので、看護師を数年やってから保健師になるのは難易度が高いです。

Q. 何を基準にして、今働いている訪問看護ステーションを選びましたか。

​​shoさん:僕は教育面がしっかりしているのかというところと、他職種連携を学びたかったので看多機やケアプランセンターなどいろんな施設を持っている会社を選びました。

齊藤さん:訪問看護ステーションにはそれぞれの理念があると思いますが、それを従業者がみんなちゃんと言えるのかというのを見ていました。長いところは覚えられないのでやめました。みんなの方向性を一致させるには理念が浸透していることが大切です。
 これからの訪問看護ステーションは24時間オンコールをやっていないと生き残っていくのが難しいので、自分がオンコールですぐ向かえる場所なのかということも大切です。

Q. 訪問看護ステーションに就職して、思っていたことと違ったことはありましたか。

shoさん:僕はインターンや実習を通じてゴミ屋敷とか床が抜けそうな家とかも見ていたので、ギャップは感じませんでした。SNSではいい情報ばかりを取りがちなので、うわっと思う事例も聞いておくといいのかなと思います。

イベントを終えて

喋り出したら止まらないというタイプのお二方から非常に多くの濃い話を聞けました。shoさんの看取りと、齊藤さんのあんパンの話が印象的でした。自分はイベントの録画を5回ほど見直してようやく奥深さが分かってきました。

病院に入院している患者さんのモチベーションとして、「早く家に帰りたい」という想いがありますが、訪問看護には退院後の看護の世界が広がっていそうですね。また、粘り強く在宅で頑張っていたけど急変で搬送というケースを考えると、在宅と急性期は近い存在のようにも感じました。居宅という日常生活の場で、ご家族とも関わりながら、同じ地域の住民という立場で、利用者さんの人生を丸ごと看られるのが訪問看護だと思いました。

協力

齊藤透さん             ​​https://twitter.com/toru_saitou
​​sho|みかづき藻なーしんぐさん https://twitter.com/mikadukimo_face

中村くん
この記事を書いた人・中村
来年度から看護学校に進む予定の農学部4年生。
関心のあるテーマは、人獣共通感染症、神経生理、高齢者福祉。
卒論終わったら看護に両足突っ込むぞ〜!
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