nano訪問看護ステーションでのインターンシップを通して学んだ訪問看護と南伊勢町

2022年9月2日〜4日、三重県は南伊勢町にて、nano訪問看護ステーションさんの協力を得てインターンシップを開催しました。1日目はコミュニティアズパートナーモデルとまち歩き(ドライブ)で南伊勢町の概要を掴み、2日目は訪問に同行して「家族」や「暮らし」を目の当たりにして考え、3日目は学びを発表しました。3日間の様子をまとめたので、ぜひご一読ください✨

目次

nano訪問看護ステーションのインターン概要

概要

南伊勢町のまち・ひと・ケアに触れる2泊3日。インターンシップの目的は、高齢化先進地域を実際に目で見て、住み慣れた場所で最期まで過ごす選択肢を支えるとはどういうことか考え、自分がこれから関わる地域への働きかけに役立てることを学びました。

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参加動機

児玉:私は大学の在宅看護学の授業を通して、訪問看護にずっと興味がありました。しかし、いざ就職活動を始めようとした時に、新卒で訪問看護に行く人が最近は増えているという話は聞くものの、訪問看護の就職に関する情報の集め方がよく分かりませんでした。周りの友人がみんな病院就職を考えており、私も病院に就職するべきなのかと悩んでいます。現在、地元の病院から内定をいただき来年から就職する予定ですが、今回この訪問看護のインターンシップを知り、是非参加してみたいと思いました。

伊藤:これまで病院就職という選択肢しかほとんど頭にありませんでしたが、1年間大学で勉強しているうちに病院でずっと働いていくことに疑問を抱いていました。そして看護師が病院以外での活動に興味を持ち、以前から気になっていた訪問看護についても実際に見て学びたいと思いこのインターンに参加しました。

南伊勢町ってこんなまち

南伊勢町は、志摩半島の南に位置する人口約11,300人(2022年8月31日 現在)の小さな街です。美しい海と自然に囲まれ、県下一の水揚げ量を誇る優良な漁場を軸とした各種漁業が盛んな地域であり、もともと9つの地域が合併した町です。総面積は241.89平方キロメートルと面積はやや大きく、端から端まで車で2〜3時間はかかってしまいます。
高齢化率が約53%と県内一位で、医師をはじめとする医療従事者の不足が慢性的な課題があります。訪問看護ステーションは5つありますが、地域住民の在宅医療の認知度が低い状況です。

1日目 南伊勢町

ないぜしぜん村

平成17年に南勢町と南島町の合併推進に携わった時の議長さんだった、山出さんに南伊勢町についてお話を伺いました。南伊勢町は医療・介護・福祉施設やサービスが充実しておらず、老人ホームは入居待ちの方がたくさんいる状況です。また、年金でやりくりしている高齢者さんも多いため、施設に入るには家族の支援が必要不可欠であり、入りたくても入れない方がたくさんいます。さらに、福祉サービスについての理解が乏しく、介護保険などに加入していてもそれを有効活用できていない人が多い状況だと教わりました。

南伊勢町の経済面は、第一次産業と観光業が中心です。特に、三重県の中でも漁業がTOPを占めていますが、財政力指数は0.25と低く、山出さんは、経済をより潤滑させるために第六次産業を活発化させようと、現在は若手への働きかけを行っています。

そんな山出さんはInstagramを使いこなしていらっしゃいます。南伊勢愛溢れる投稿はこちらからご覧になれます→@naize_soncho

みなみいせ元気ネット

『みなみいせ元気ネット』とは、地域でのスポーツや健康づくりを支える民間の団体です。代表の玉山寿美さんにお話を伺いました。みなみいせ元気ネット主催の『元気シニア健康教室』では、週に一度、地区ごとにシニアが体育館に集まり運動しています。

元気シニア健康教室の効果

定期的に集まる場は、シニア層での仲間づくりや役割喪失を補うことにつながっています。健康教室に参加している方は仲間をつくることを1つのモチベーションにしており、要介護にならないよう、周りの人を巻き込んでみんなで健康になろうという意識を持っています。毎週集まることで、いつも来ている人が来ていなかったりすると家に様子を伺いに行くなど、お互いが気にかけあい、助けあうという関係が広がっていることが分かりました。
実際に、「いつも来ている人が来ないことがあり、家に様子を見に行ってもらったら、熱中症で倒れていた例もありました。」と玉山さん。見守りの機能も果たしていることがよく分かりました。

持続可能な運営体制づくり

持続可能な仕組みを作るため、組織図を作って一人ひとりの役割を明確にしたり、集落ごとに研修を受けたリーダーを輩出していました。リーダーは健康教室の際、運営の中心になることはもちろん、体育館の点検や掃除にも率先して取り組みます。さらに、リーダーとなった方は、役割と責任が発生するため、ボランティアではなく報酬を得られるよう予算を確保しています。

もちろん、最初から予算が確保できていたわけではありません。分かりやすく行政に効果を示して、予算をつけてもらうよう説得する必要があります。そこで、半年に一度体力測定を行い、結果をグラフで表しました。行政からの予算や助成金に結びつける説得材料になったほか、効果を可視化することによって「参加しようと思ってくれる人が増えた」と数字が活動の広がりにも貢献したことを語ってくださいました。

Instagramは日々更新されており、シニア向けの取り組みのほか、スケードボード教室の取り組みなどが発信されています!ぜひご覧ください✨→@minamiise.genki_net

デイサービス「いちに」

今年の8月にできたデイサービスである「いちに」は、“施設っぽくない”をコンセプトとしています。建物に入るときには靴を脱ぐ、段差がある、お風呂やトイレも一般家庭のつくりとあまり変わらない施設の中のこだわりがありました。利用者さんは介護されているという感覚が薄れ、自尊心を持つことができることと、普段生活している家と同じようなつくりにすることで、運動機能の維持につながるようにしています。

また、『いちに』は週4日のみ営業しており、職員の働きやすい環境を作ることも大切にしています。職員がリラックスできる時間を作ることで心にゆとりができ、利用者さんに対して、関わり方が丁寧になり、より良いサービスを提供することができると考えているそうです。この地域ではデイサービスや他の施設との協力体制が整っているのも特徴です。多職種で連携を取り、なるべく多くの方に合ったサービスを提供できるようにしています。

「いちに」では、デイサービスの営業日以外はいろいろなことにチャレンジ中です✨
ぜひInstagramをご覧ください→@ichini_ichini_ichini

2日目 訪問看護同行

nano訪問看護ステーションの看護師・西川さんに同行し、午前2件・午後2件の訪問看護に同行しました。

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Aさん…認知症
実施内容:バイタル測定、全身清拭、陰部洗浄、車椅子移乗、ベッドメイキング
お話する、歌、車椅子で過ごす時間を作る、介護者のご家族さんへ何か困っていることがないか、日常生活での患者さんの様子
看護師の関わり方:
・清拭や陰洗の際の物品は家の中にあるもので代用していた。シャワーボトルはペットボト ルで代用し、防水シートは市販のビニールシートを使用していました。
・利用者は歌を歌うのが好きで、タブレットで曲を流して歌を歌ってもらいました。

Bさん…間質性肺炎、呼吸苦
実施内容:バイタル測定、入浴介助
看護師の関わり方:
・体調や呼吸苦の程度に合わせて入浴時間を短縮するなどして、入浴をサポートしていました。
・家の構造を考慮して利用者が負担なく移動できるように動線を工夫していた。
・入浴介助のために訪問看護が入ることで奥さんの介護負担が軽減されていると感じた。

Cさん…胸椎骨折、腎不全
実施内容:バイタル測定、入浴介助、お薬カレンダーのセット
看護師の関わり方:
・家の構造を考慮して利用者が負担なく移動できるように動線を工夫していた。
・話好きの方で、たくさんお話して楽しい時間を過ごした。

Dさん…発達障害、てんかん、統合失調症、褥瘡
実施内容:バイタル測定、人工肛門と尿道カテーテル管理
看護師の関わり方:
・利用者さんや介護者のご家族とお話した。
・介護者のご家族が、物品を補充したり使いやすい位置に設置したり工夫していた。ご家族 と「ここにトイレットペーパーあると使いやすいですね!」など楽しくお話しながら情報 共有していた。
・毎日入っている介護士とノートで情報共有していた。

インターンを通じての気づき・学び

児玉:まず南伊勢町に来て、町で出会う人達がみんな優しくて良い人ばかりだと思いました。そして、きれいな海と山の豊かな自然に恵まれた素敵な町だと感じました。

1日目は、南伊勢町に住み、活動をされている3人の方々からお話を伺い、南伊勢町をより元気な街にしたいという想いを感じました。南伊勢町の特徴や課題について知る一方で、私の住んでいる地域について、ここまで詳しくないため、もっと自分の住む地域について調べてみたいと思いました。

2日目は、訪問看護に同行させていただきました。病院では、24時間365日医療者の目が行き届いている一方で、一人の患者さんだけに長い時間かけてお話することは、なかなか難しいと思います。しかし訪問看護では、週に1回〜という風に、訪問に行ける回数は限られているものの、利用者さんとじっくり向き合うことができることが魅力的だと思いました。実際に、利用者さんが訪問看護師さんと話す時、とても嬉しそうだったのが印象的でした。利用者さんが、訪問看護師さんのことを医療者としてだけでなく、一人の人として信頼していると感じました。

私はこのインターンシップを通して、自分の将来の働き方に対する視野が広がりました。nano訪問看護ステーションを立ち上げた葵さんをはじめ、訪問同行させていただいた西川さん、南伊勢町のあたたかい方々、インターンシップを運営してくださった看たまノートの方々から沢山の前向きな刺激をいただきました。私が将来何をしているかはまだ分からないけれど、今回のインターンシップの経験を胸に、自分の人生に後悔のないよう、働き方についてワクワクしながら模索していきたいと思いました。

伊藤:1日目は、南伊勢町について3人の方からお話を聞いたりコミュニティー・アズ・パートナーモデルを使って町全体についてまとめました。南伊勢町は人と人が密接に関わり、活力のある人がたくさんいると感じました。この街や住民を元気にしようと新たなコミュニティーを作る人々がいて、賛同し協力してくれる人がいて、どんどん仲間が増えていくんだなというのを感じ、街の人々がなぜ南伊勢町が好きなのかが少しだけわかったような気がしました。私が感心したところは、町の人同士だけでなく、ほかの地域から来た人に対してもとても暖かいところです。南伊勢町で新しく何かを始めようとする人を応援し、協力し、親戚の人のように接しており、移住してきた人が安心して生き生きと暮らせそうだと感じました。

2日目は、訪問看護に同行させていただき、訪問看護の良さにたくさん触れることができました。私はずっと患者さんのためにしっかりと時間を使ってじっくり向き合っていきたいと思っていたので、訪問看護では実現しやすいのだろうと感じました。30分あるいは1時間、患者さんのご自宅でケアをしながらたくさんお話を聞くことができて、生活を直に見ることで、必要なサポートをよりリアルに考えることができると思いました。同行させていただいた看護師の西川さんも患者さんのその日の様子をみて、ケアの仕方を考えており、常に患者さんのことを想った看護ができるのが素晴らしいと感じました。患者さんが望むことを優先し、病院では聞き入れてあげるのが難しいことも実現しやすくなると知って、より患者さんがその人らしくのびのびと暮らすことができ、それは看護師としても喜ばしいことだと思うので私もそんな看護ができるようになりたいと思いました。また、在宅での看護は、病院とは違って使える機器も物品も少ないため、できることが少ない面もありますが、患者さんのご自宅にあるものを使いながら工夫して看護しやすいようにしていて、家族や介護士とも協力しているのだと実感できました。

この2日間を通して、町と看護の繋がりをみれたり、訪問看護の今まで気づけなかった魅力を知れたりしてより地域医療や訪問看護に興味が湧きました。また、地域医療に関わる他の業種の方や、看護師の様々な働き方についてももっと知りたいと思います。まだまだ大学生活が長いので、その時間を無駄にせず、自分の将来についてたくさんの選択肢をもってしっかりと考えていきたいと思います。

ーーーnano訪問看護ステーションの皆様、利用者さん、村長さん、玉山さん、元座さん、まち歩きを調整してくださった西岡さん、助成金の窓口になってくださった役場の職員さん、本当に受け入れてくださってありがとうございました!またお邪魔させてください!!!

今回、インターンを受け入れてくださったnano訪問看護ステーションの詳細はこちらの記事からご確認いただけます。代表・前田葵さんのインタビューも近日公開予定です!お楽しみに!

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