2022年9月30日(金)にオンラインにて行われた第4回GNERPセミナー・「幅広い分野で活躍する看護師達ーフィンランドにおける看護師のキャリア形成ー」に参加しました。
世界幸福度ランキング5年連続1位に選ばれたフィンランド。ワークライフバランスの取れた働き方、4週間の長期休暇など“働き方”においても世界中から注目されています。では、看護師の働き方やキャリア形成はどのようなものでしょうか。
\今回のイベントのゲストはこの方!/
久末 智実(ひさすえ・ともみ)さん:ヘルシンキ在住・研究者
北海道出身。看護師・助産師・保健師。日本、オーストラリアで正看護師として勤務。その後、渡欧し数カ国での修士課程を終え、現在はフィンランドのタンペレ大学の健康科学学科博士課程に所属。
フィンランドとは
北ヨーロッパに位置する共和制国家。EU加盟国。ヘルシンキが首都。面積33.8万㎢、人口約551万人(2018年12月末時点)と面積は日本と変わらないものの、人口は北海道と同じくらい。幸福度は世界1位、ジェンダーギャップ指数は世界第2位の国です。(参考文献:コトバンク・男女共同参画局)
女性ブランドのマリメッコやムーミンが有名なフィンランド。会社には女性が多く、男・女という意識はとくにありません。働き方に関して、長く同じ勤務先にいることは珍しく、職種にもよりますが、自分で人生に適した職を探すのは普通であり、一つの同じ仕事を頑張って続ける概念がないそうです。
フィンランドの医療事情
フィンランドも少子高齢化社会であるため、看護師不足が課題となっており、移民看護師を受け入れています。合計特殊出生率は日本とほぼ同じですが、産休の制度もしっかりしており、例えば、学生の時に妊娠しても休学し、継続して勉強できる仕組みになっています。『ネウボラ』*という母子保健支援施設が普及されており、「育児パッケージ」が妊婦に贈られます。「育児パッケージ」には最初の1年間に必要な育児用品が入っているそうです。
ネウボラ*・・・フィンランドにおいて、妊娠期から出産、子供の就学前までの間、母子とその家族を支援する目的で、地方自治体が設置、運営する拠点。また、出産・子育て支援制度のこともいう。育児に必要な物品などを支給する育児パッケージの給付が民間の手で始められ、助産師の自宅などを利用した母子支援の活動とともに徐々に広がっていった。1944年、自治体には出産・子供支援の地域拠点のネウボラを設置することが義務づけられた。(引用:コトバンク)
また、医療人材の不足や、医療の質の向上に対し、テクノロジーやIT技術、ロボットの導入も議論されています。具体的には、オンライン診療や医療情報システムKantaというサービスが普及しています。『Kanta』とは、利用者が自分の医療情報、電子処方箋の内容確認、処方箋の延長・更新、医療機関に訪ねた記録、診断記録などを確認することができるシステムです。また、医療関係者もこのシステムを通じて患者の医療関連情報を閲覧できるので 公立の病院であれば、どこでも患者さんの過去の医療情報にアクセスできます。
フィンランドの看護師
看護師の給料は、平均3183,EUR(約454,457円)。看護師不足はフィンランドでも課題となっています。看護師の資格の種類として、Sairanhoitaja(日本でいうと正看護師)・Lahihoitaja(日本の准看護師に近い資格)があります。
看護師は大学(応用科学大学)で3.5年〜4.5年間通い、必要な単位を取得します。保健師、助産師、救急救命士も同じ学校教育を通じて資格を取得できますが、それぞれ必要な単位は異なります。フィンランドはEU加盟国であるため、単位もヨーロッパの基準となっています。
- 登録看護師:210単位
- 保健師、救急救命士:240単位
- 助産師:270単位
看護師不足のため、移民看護師の受け入れ条件は以前より緩和されてきているのだとか。現在はフィンランド語を学習しながら仕事をする人(特に外国で看護師の資格を持つ方)が増えているそうです。
フィンランドでの看護師のキャリア形成
フィンランドは移民や難民を受け入れる方針が背景にあることで、多様性が尊重される文化があり、副業・兼業する人が多いです。日本では、「〇〇さんは〜〜の仕事をしています。」と、一つの仕事がその人を表すことが多くありますが、フィンランドでは、人を仕事で表すことは難しいです。
看護というキャリアが中心になりますが、看護という枠を超えたキャリアを歩んでいたり、看護師の経験が長い人が必ずしも管理者になるのではなく、修士過程でマネジメントを学んだ人の多くが管理者になり、経験に捉われない働き方が実現されているところは、少し日本とは違うところかもしれません。管理者は現場で働くことは少なく、マネジメントに集中することが多いそうです。
参加してみての感想
糸数:看護師不足は、日本と同じように課題となっているのにも関わらず、キャリアの考え方はとても柔軟であることに驚きました。資格に縛られず、やりたいことが変われば、違和感なく飛び込んでいくことはとても素敵なことですし、私身過去に囚われなくても良いのだと気持ちが軽くなりました。私は、キャリアについての考えはもっと自由で良いと思っていましたが、セミナーに参加し、よりキャリアの考え方の視野が広がりました。日本でも、人生を主体的に考える人が増え、自分の進みたい人生を歩めるような社会を創造したいと思います。
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参考
https://www3.nhk.or.jp/news/special/izon/20190529fukushi.html
https://www.icn.ch/news/finnish-nurses-call-improved-salaries-and-working-conditions-address-nursing-shortage-and
https://www.nurses.fi/nursing_and_nurse_education_in_f/
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