【インターン体験記】医療法人社団オレンジに飛び込んだ、ばたこさん3/5

今回の記事は、「医療法人社団オレンジ」にインターン生として飛び込んだ、当時大学2年生のばたこさんのインターンの足跡をご紹介。ご本人のnoteに掲載したものを、特別に看たまノートに出張掲載していただきました。

ばたこさん
この記事を書いた人・ばたこさん

2023年度から4年生の看護学生。看護学のほか、環境にも関心がある。趣味は河原や公園、港でごろごろしたり空をひたすら眺めること。
ばたこさんのInstagramはこちら→https://www.instagram.com/pandabatakopanda

目次

3日目 みんなの保健室 宝永

この日は宝栄保健室で火曜日のサロンを見学し、林田さん・近藤さんとお話しさせていただきました。

みんなの保健室とは、「ひとやすみしながら自分らしい暮らしへのつながりを見つける場所」です。
「からだのこと、こころのこと、日々の生活のこと。家族や友達、人との関わり方のこと。病院に行くほどではないけど、ちょっとしんどい、ちょっと不安」なことを気軽に話したり、情報をもらったり、ただトイレ休憩や雨宿りで立ち寄り、居ることもできる場です。

「第三の居場所」を作ることに興味があったので、このコンセプトに感動し、たくさんお話しさせていただきました。

この「みんなの保健室」を運営されているのが林田さん。
ガラス張りの保健室の前を、中を覗くように通り過ぎた人にとりあえず手を振る。
いつでも入ってきていい、ふらっと立ち寄れる雰囲気づくりを心がけているそうです。

火曜サロン

毎週火曜日はサロンを開催しており、今回はペットボトルのキャップを箸でつまみ、その数を競うというイベントを見学させていただきました。そこに参加された方々の会話が印象的でした。

「あら、久しぶりやね~」
「あなたのお洋服素敵。ご自分で作られたの? すごいわね」

この保健室に集まると、他愛のない、日常的な会話が自然と起こる。
中には一日中家に一人で居る方もおられるそうで、一日中誰とも喋らない、笑わないという生活ではなく、ここに集まることで、人とのつながりや生きがいが増えていく。
(笑うことが最も質の良いワクチンであり、薬であり、健康維持方法だと親に教え込まれた私にとって、一日中笑わない生活はなんとしてでも改善したいとこのとき思いました。)

みんなの保健室という場所があることで、生き生きと生活することができる。

この翌日に学ぶ、ポジティヴヘルスの考え方が実践されているなと感じました。
健康とは、単に身体的・精神的に障がいや病気がないことではない。
またたとえ障がいや病気があったとしても、自分の人生を自分らしく生きることができたらそれは健康。
誰かとの日常的で密な関わりがあることで、生きがいとなり、より楽しく幸せに生活することができる。

その考え方が、みんなの保健室では実践され、たくさんの人の健康が支えられているのだなあと感じました。

林田さん、近藤さんとお話

林田さんと近藤さんとお話しさせていただき、林田さんがここに就職した経緯や保健室をやるにあたっての思いを伺いました。

特に印象に残ったのは、「出る杭は打たれる覚悟で」というお言葉です。
自分が何かを達成したいときに、誰かの批判を恐れていては何もできない。何かを変えようと思えば、それなりに批判や反対があるかもしれない。
でも、自分が本当にそれをやりたかったり、それによって良い方向に進むのだとしたら、強く信念を持って、打たれる覚悟を持って挑戦しなければいけない。

私は少しでも批判されると自分の意見や考え方に自信がなくなり、すぐに自己嫌悪に陥ってしまいます。
そうではなくて、「批判があることは当たり前だ、だってまだしっかりとした根拠がないくらい新しいことをしようとしているのだから。」といった精神で挑むこと。
自分のやりたいことを周囲の人に伝え、理解してもらうことを諦めないこと。
それが大事だということを学びました。
人間関係も、新しい取り組みも、よりHappyな社会も、一朝一夕ではつくられない。
じわじわ、こつこつとつくっていくしかない。
そのことをよく理解して、自分や周りの大事な人が幸せになる方法を考え続けたいと思いました。

4日目 つながるクリニック

この日は再び「つながるクリニック」にて、「医療法人社団オレンジ」の理事長である紅谷先生の診療を見学し、お話しさせていただきました。

診療の中で印象的だったのは、患者さんが下を向いていらっしゃるとその視界に入り込むようにお顔をのぞき込み、目線を合わせていらっしゃったことや、「一緒に考えていきましょう」「ちゃんと直りますから、大丈夫です」と力強く仰っていたこと、カルテの中にあった気になるところからどんどん地元の話へと変化していったこと、などです。

一人一人の患者さんに寄り添い、その方を身体的な面だけではなく生活もひっくるめて知ろうとされている姿勢が素敵だと思いました。

紅谷先生が診察の中で、ポジティヴヘルスを用いられ、私も参加させていただきました。

Alt="ポジティヴヘルス"

健康とは単に「身体の状態」だけでなく、「心の状態」、「いきがい」、「暮らしの質」、「社会とのつながり」、「日常機能」の項目においてバランス良く満たされていること。またそこを満たし、幸せを実現する能力のこと。

自身の生活や人生を振り返りながら、この6項目それぞれに点数をつけていきます。
点数が低い=悪い、というわけではなく、自分が人生に対してどんな認識を持っているのか知ることが重要だと仰っていました。

すなわち、たとえ身体的な障害を持っていたとしても、自分らしい生活や幸せを実現できる能力があるのであれば、それは健康と言える、ということです。

この人は外で歩いたりお花を見ることが好きな人で、今日はとても天気が良いから、診療より散歩を優先しよう。
そう考えるのが、オレンジさん。

相手の健康や幸せにつながることを優先するという点で、まさにこの「ポジティヴヘルス」の考え方を実践されているのだなと感じました。

紅谷先生とのお話

診療の合間を縫ってお話ししました。
コミュニケーションにコンプレックスを抱えていたので、ご相談させていただきました。

咄嗟にうまい受け答えができなくて、何をどう質問して話を盛り上げれば良いのか、相手に興味を持って質問すると言ってもどこからそれを思いつけば良いのか。

サークルや大学でも悩んでいたコミュニケーションについて、紅谷先生に伺いました。

紅谷先生は、「会話が盛り上がることが大事なのではない。すっごい盛り上がって、でも何話したか覚えてない、では意味がない。会話の中でEXILEが出てきた。後日テレビでEXILEを見たときにその人を思い浮かべる。それが本当のコミュニケーションだ。」と仰いました。

相手に興味を持つ。そして記憶に残る会話をする。そして、その人と離れても相手のことに想いを馳せる。それが本当のコミュニケーションで、会話がずっと続くとか、面白い話をするとか、そういう次元ではないということを学びました。

上手にコミュニケーションをしよう、というよりは自然体で、気になったことを聞いたり話したいことを話したりする。
もっと肩の力を抜いてお話しすれば良いのだなと気づくことができました。
今後心がけていこうと思います。

ナスくる

このあとは「ナスくる」に同行させていただきました。
「ナスくる」とは、「ご家族に寄り添い信頼できる第二の親戚として、つながりとトキメキのある日常を一緒に作」るサービスです。

Alt="ナスくる 福井県"

「ナスくる」のしくみ

定期的にお宅に訪問し、些細なことも気軽におしゃべりしたり、健康チェックでより健康になるようにアドバイスをしたり…。疾患の予兆を確認して、生活の様子を離れて暮らすご家族にご報告もします。

一見訪問看護にも見えるこのサービスは、実はそれとは全く違います。

私も驚きましたが、同行させていただいたスタッフさんが、お二人とも看護師でも医師でもなかったのです。
なぜ、医療職の資格を持たない方がやられているのか。道中色々とお話を伺いました。

そのお話の中で最も印象的だったことは、「資格を持たないぶん『ただの人』として利用者さんと接することができる」と仰っていたことです。

看護師や医師などの医療資格を持っていると、どうしても相手を「患者さん」として捉え、健康問題を「アセスメント」する視点に重きを置いてしまいます。

しかしそのような視点を持たない方だからこそ、相手を「人」として受け止め、自分も「人」として受け入れてもらえる。
もちろん健康チェックは資格を持つ看護師などが行うものの、この「ナスくる」のコンセプトである「第二の親戚」としては、資格の有無に関わらず接することができる
そんな不思議な関係性をサービスとして提供していることに驚き、その凄さを感じました。

またその後訪問看護にも同行させていただき、実際の看護の手技も見学しました。
訪問にあたって、家族の背景も考えながら、その人に一番合ったサービスは何か複数のサービスが協力し合いながらお一人を見守っていく体制づくりが重要だと学びました。

研修後

この日の研修が終わって、紅谷先生方と晩ご飯をご一緒させていただきました。
お仕事が終わられたプライベートの場でも、地域にとって必要な医療とは何か、どういった働きかけができるのか、といったことを語り合っておられ、情熱の凄さを感じました。

ずっとお話を聞かせていただいていたのですが、だんだんと難しい話になっていって頭に入らなくなっていきました…。
すごく貴重なお話だったのに…。

そんな中、ほっちのロッヂで働かれている介護士であり、ミュージシャンでもあり…という不思議な肩書きを持たれた、サーフボードストレッチがお好きな(?)伊藤さんが、こう仰っていたことが強く印象に残りました。

「あなたのためになんとかしたい、と思った『わたし』を主語にしなければ動けない」

大学の講義やオンライン実習の中で、看護計画というものを立てます。
患者さんの健康問題に優先順位をつけ、それぞれに対する看護目標を立て、具体的な計画内容を記していきます。

その、看護目標を立てるところで必ず言われるのが、必ず患者さんを主語に置きなさい、ということ。患者さんがいつまでにどんな状態になっていれば看護はうまく遂行されたと言えるのか。それを具体的に考えるために、患者さんを主語にする。

患者さんを主語にして、「◯◯さんが、退院前日までに△△できるようにする。」そんな目標を立てるのですが、どうしても患者さんを主語にするとうまく立てられないときや、しっくりいかないときが多々ありました。

その違和感を、伊藤さんは一蹴されました。

自分を主語にしないと動けない。
患者さんにやってもらうことはあるけど、看護介入は自分が行うものだから。
私が、患者さんの健康や幸せのために、あれをしたい、これをしたいと考えるから。

すごくしっくりきました。
なんとなく大学の講義で言われることが絶対的に正しいのだと思って過ごしてきましたが、自分の違和感や疑問も大事にしたいと思いました。

一応看護計画は患者さんを主語にしている体でこれからも立てていこうと思いますが、「私」を主語にする視点も忘れずに、同時に考えて行けたら良いなと思いました。

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