皆さんは「診療看護師」という言葉を聞いたことがありますか?看護師の多様な働き方のひとつに診療看護師があります。現在、山形県の病院で診療看護師として働く野津花子さんにお話を伺いました!診療看護師のお仕事とは?野津さんが感じる診療看護師の魅力とは?ぜひご一読ください。
今回の記事はこんな人におすすめ!
- 診療看護師に興味のある方
- プライマリケアに興味のある方
- 大学院への進学に興味のある方
今回インタビューにご協力頂いたのはこの方!
野津花子(のづ・はなこ)さん
看護師、診療看護師の資格を持つ。慢性期こそ診療看護師が必要なのではないかと考え、大学院へ進学し、診療看護師の資格を取得。病院に勤め、診療看護師として働いている。看護教育に興味があり、大学院時代には看護教育についての研究も行っていた。
診療看護師はどのようなお仕事を行うのでしょうか?
野津さん(以下、野津):診療看護師の業務は、通常の看護師業務と根本は変わりませんが、法律の下に特定行為が実施できるなど、プラスして医師の指示のもとでできることが増えます。
医師の指示があれば通常の看護師よりできることは増えますが、法律は変わっていないので、あくまで診療の補助業務までを行います。診断や、手術執刀、侵襲性の高い処置などの絶対的医行為は、診療看護師であっても、行ってはなりません。
医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為のこと。
引用:厚生労働省「医行為について」
➤➤https://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/02/s0203-2g.html
具体的な業務内容は、朝は医師と一緒に回診を行い、夜間の状態を看護師から聞き、治療方針を医師と検討していきます。それが終わると、代行記録を行い、医師に確認していただきます。
私が勤める病院は透析がメインなので、透析室の回診にも行きます。回診では、透析患者の日常生活のフェーズや問題点となっていることを見つけていきます。
看護師と情報共有を行い、問題点を見つけて医師に相談したり、医師と治療内容や入院の必要性の検討を行ったりしています。
必要に応じて手術室のモニターの観察に入ることや、看護師の相談の電話対応を行うこともしています。
診療看護師の働き方は、国によっても病院によってもさまざまです。
野津:私もずっと新卒からこの病院にいるので、皆顔見知りのようになっています。本当に信頼されていると思えるのがやりがいの一つでもあります。看護師からの相談をしてもらいやすい立場にあることを誇りに思うし、それにコミットできることも、とても嬉しく思っています。
野津さんが診療看護師を目指したきっかけについて教えて下さい
野津:修士課程の大学院が終わる頃、このまま研究を続けたい反面、博士課程に進むのは実力不足だということを自覚していました。認定看護師や専門看護師の選択肢もあったのですが、周りにその資格を持っている人がいなかったこともあって、明確なビジョンが見えていませんでした。そんな時、院長先生から紹介していただいたのが診療看護師でした。
その当時は「診療看護師は、お医者さんのようなことをするのかな」というイメージを持ってました。
そんな中、院長にアメリカの診療看護師の働きを学ぶためのハワイ研修の話を頂き、1週間ほどハワイに行ってさまざまな診療看護師と出会いました。
見てきたものの中で一番私の心に刺さったのは、医師は疾患に対しての適切な治療を行う一方で、診療看護師は疾患だけでなく、患者の経済状況や家庭環境を考えたうえでケアを提供できるという視点でした。
診療看護師は“医師の代わりとして”という側面もあるのですが、それだけではなく患者の背景によりコミットしたケアを提供できることが醍醐味だということに気が付きました。それに気づいたときに診療看護師という選択もすごくいいなと思いました。
日本で感じていた診療看護師のイメージは、救急やICU系だと思っていましたが、海外はプライマリケアで重視されている診療看護師が大多数いることが分かり、そこも魅力的でした。プライマリケアだからこそ、医師の手が届きにくい部分もあります。ハワイ研修で、診療看護師が配置され充足されていることを目の当たりにして、日本でもプライマリケアに診療看護師が配置される制度があったらいいなと思い、診療看護師になることを決意しました。
プライマリケア領域での診療看護師に未来を感じるところにすごく共感します!
野津:私も本当にそう思っています。NP協議会ではクリティカル・ケアとプライマリ・ケアの二つに分かれています。私は、急性期の知識がなく、プライマリケアこそクリティカルケアの知識が必要なのではないかと思ったので、私はクリティカルケアを選考しました。
生命の危機的状態(クリティカル期)にある重症患者に対して行うケアのことである。
引用➤➤https://www.kango-roo.com/word/5843
病気や怪我をしたとき最初に受ける医療のことである。初期診療とも言われる。
診療看護師になるために大学院ではどのような学習をするのでしょうか
野津:学校によって異なる部分もあるのですが、大学と同じように最低限のカリキュラムが定められていて、解剖生理学と領域別の各論のより細かい学習や、実技的な実習も行います。診療看護師の資格取得のためには5年間の実務経験が条件として定められていて、経験も積み重なっているので、看護より医学的なことを学びます。
特定行為を1年生の時に身に付け、2年生で病院実習を行います。看護師の業務でいうと、日常生活の援助より、診療の補助業務を磨いているようなイメージです。
診療の補助であり、看護師が手順書により行う場合には、実践的な理解力、思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能が特に必要とされる行為です。
引用:厚生労働省「特定行為とは」
➤➤https://tinyurl.com/2k6cgplu
新卒での就職先はどのように決めたのですか?
野津:大きい病院だと、自分の希望の病棟に配属されにくいと考えていました。また、異動もあるので、自分の思い通りにキャリアを積みにくいイメージがありました。
そのため、ある程度診療科が定まっている小規模の病院がいいと思い、今の病院に決めました。小さい病院も大きな病院もそれぞれメリット・デメリットがあるのではないかと思います。
診療看護師としてのお仕事のやりがいを教えてください
野津:診療看護師がいることで、より早く患者の異変の察知や、対応できることが増えたのはやりがいにつながっています。
診療看護師は免許ではなく、あくまで学会の認定資格ですが、2年間勉強して資格に受かったという実績に対して信頼してもらえていると感じています。
それだけではなく、診療看護師に限らないことですが、“人としての信頼”を築き上げていくことも大事だと思っています。
お仕事をするうえで大切にしていることを教えてください
野津:信頼を築き上げていくためのコミュニケーションを大事にしています。診療看護師の資格を持っていても、その資格に頼りすぎることなく、一人の人間として気持ちの良いコミュニケーションを取っていくことを心がけています。
具体的には、「気になっている患者・看護師には、こまめに声をかけてコミュニケーションを取っていくこと」「話しやすい雰囲気をつくること」「忙しくても忙しそうにしないこと」「『相談してくれてありがとう』と伝えること」などです。
新人看護師は特に「何か間違えたことを言ってしまうのではないか」「怒られるんじゃないか」と考えて、先輩看護師に話しかけにくいこともあると思います。なるべくその空気感をとっぱらうことができるようなコミュニケーションを心がけています。
今後、チャレンジしていきたいことを教えてください
野津:結婚と出産をする前は、「臨床の現場にいたい」「いつか博士課程に進みたい」と考えていましたが、実際に結婚して育児をしてみると想像していたよりも忙しく、今は、すぐに博士課程に進むのは難しいと感じています。
ですが、いつかは博士課程に進みたいという想いはまだあります。
いつか博士課程に進めるタイミングが来たときに、そのチャンスをつかんで飛び込んでいけるように、育休中に自分の研究論文の執筆や、英語の勉強、進学のための貯金を積み上げていこうと思っています。
「今チャンスだけど、これがないからできないや」となってしまうのはもったいないですよね。なので、ぜひいろんな種をまいて育ててあげるといいのかなと思います。
看護学生へのメッセージをお願いします!!
野津:看護学生のうちから、将来のキャリア選択やライフプランを考え始めると思うのですが、今後の人生で、自分の都合だけではどうにもならないこと、思いがけないことがたくさんあると思います。なので、自分のプランを固めすぎず、その中でも「いつかはこうなりたいな」という想いを持っておくことが大事だと思います。
想いを持ち続けていたら、“いつか”がくるベストなタイミングはあると思うので、チャンスが来たら選択できるように、ぜひ頑張って体力や気力、知識やお金をためて行ってほしいです。
また、自分がどれだけ素敵な看護師で病院に引き止められるような看護師になっていけると良いのかなと思います。
看護師として働いていくうえでは魅力のある看護師さんになっていってほしいなと思います。時に、自分がどうしたら病院に必要とされるような看護師になれるのか考えながら、強みや武器を増やしていってほしいです。
コメント