近年、新卒看護師が訪問看護師を目指すことができる教育モデルが確立されつつあり、卒業してそのまま訪問看護ステーションへの就職を考える看護学生が増えてきているように感じます。
一方、病棟経験がないまま訪問看護に進むことになるため、「看護技術・知識の未熟な自分が、一人で訪問看護ができるのだろうか」という不安の声も耳にします。
そこでこの記事では、上記の不安を解決すべく、看護学生が新卒訪問看護に進むうえで気になっている“訪問看護ステーションの教育体制”に焦点をあて、実際に新卒看護師を受け入れている訪問看護ステーションを取材しました。
この記事はこんな人におススメ!
- 在宅・訪問看護に関心がある人
- 看護教育に関心がある人
- 看護職についてからのキャリアアップに悩んでいる人
今回お話を伺った訪問看護ステーションはこちら!
看たまノートのパートナー企業様。2015年2月設立。埼玉県所沢市を拠点に、2つの訪問看護ステーションと保育園、病児保育などを運営している。訪問看護ステーション「トータルケア」は、在宅医療を必要としている全ての方に24時間365日、質の高い在宅医療と訪問看護サービスの提供を実現している。
訪問看護ステーション・トータルケアで行っている新卒訪問看護師教育
訪問看護ステーション・トータルケアでは、看護師は国家資格を保有するプロフェッショナルであるという事を前提に「プロとして看護を提供できる訪問看護師の育成」を初期教育の目標としています。この教育理念のもと、さまざまなツールや手法を用いながら、訪問看護師として成長できる環境を整えています。
その一つとして、トータルケアでは、訪問看護技術に特化して作成されたOJTブック『HOW TO 訪問看護』を用いています。OJTブック『HOW TO 訪問看護』は、経験した看護技術の習熟度をチェックし、技術の習得をサポートする冊子です。
訪問看護は病棟に比べ、経験できる看護技術が少ないイメージもあるのではないでしょうか。OJTブック『HOW TO 訪問看護』を活用することで、習得する看護技術に漏れがないか確認することができます。また、実践したケアについて日付とともにどこまでできるようになったかを記録するため、成長の過程を可視化することができます。患者さんの状態によって獲得できる看護技術も変わるので、新卒看護師の習熟度と利用者さんの状態をマッチングさせながら、段階的に一人立ちに向けて技術を磨いていきます。
また、トータルケアではプリセプターシップを導入しており、担当の先輩訪問看護師とマンツーマンでケアの実践を行っていきます。ケアをしているときに一対一で後ろから見られるのはとても緊張すると思うので、ケアの最中は、先輩訪問看護師と一緒に確認しながら行っていきます。ケア後に一緒に振り返りを行い、できていた部分・足りなかった部分を確認していきます。こうして、一つずつできることが増えることが新人看護師の自信につながりますし、単独で訪問できる件数も徐々に増えていきます。もちろん、看護技術のことだけでなく、訪問する際のマナーも確認しながら、一人一人に合わせて体系立てて教育を行っています。
新卒看護師の場合、3ヵ月間は同行訪問の中で訪問看護に必要なマナーとシステム理解を身に付けつつ、しっかり看護技術を磨いていきます。3ヵ月を経過するころに、1日に一人程度、単独での訪問ができるよう育成しています。単独での訪問開始は、看護技術に関するチェックシートの約8割が経験済みになっていることを目安としています。
徐々に単独で訪問できる患者さんを増やしつつ、時にはまた同行に戻して先輩の目で確認しながら、入職6ヵ月ごろには *一人立ち を目指します。もちろん一人一人得意分野や苦手分野がありますので、一人立ちができるようになるまでの期間は個々の修得度合いを見ながら調整しています。一人立ち後も指導とアドバイスをしながら、訪問看護師としての成長を、プリセプターを中心にスタッフ全員で支えていきます。
教育において一番大切にしているところ
看護師として行うケアの手順や根拠は、病棟で行う看護ケアも、訪問で行う看護ケアも変わりはなく、同じであることが一番大切なポイントです。
また、訪問看護でも全身状態の観察からアセスメントし看護計画を立て、看護実践を行っていくことに変わりはありません。トータルケアの新人訪問看護師は、教育課程の中で事例の振り返りをします。学生時代に用いていた理論を使ってアセスメントを行い、それを先輩訪問看護師と一緒に確認していきます。看護過程を展開することで患者さんへの理解も深まりますし、基本の部分は学生時代に学んできた通りだと再確認する機会になります。
さらにトータルケアでは、入社から一年間を「クローバーナース」と呼び、一緒に不安や疑問を解決できるための「クローバー会」を開催しています。クローバー会では「明日の訪問からすぐ役立つ知識・技術を学べる場」として、定期的に集合研修を行っています。クローバーナースたちが、日々訪問に回る中で今知りたいことを出し合い、テーマを決定します。過去には、実際の患者事例を用いての看護過程の展開、退院カンファレンスのロールプレイング、外部講師を招いての接遇研修などを行いました。
トータルケアの看護師ファーストな働き方
病院では、勤務希望を提出した際には管理者がシフトの調整をしていると思うのですが、トータルケアではシフトの調整をしていません。看護師が自由な働き方ができるように、本人が提出したシフトがすべて通るようなシステムになっています。基本的な考え方は二交代制なのですが、各自その月の勤務時間数と各雇用形態の条件を満たしていれば、どのようなシフトを提出しても問題がないようなシステムの導入をしていたり、オンコールの際も、患者さんからのお電話が直接看護師に繋がるのではなく、一度コールセンターに繋がり、看護師の負担を軽減できるようなシステムづくりをしています。
ただ看護師の数が少ない日などは、会社が募集をかけ、出勤可能な方に挙手性で出勤調整してもらっています。(手を挙げた看護師にはポイントをつけたり、会社に貢献した看護師には、手当として還元したりもしています。)このようなシステムや制度を取り入れることによって看護師が働きやすい環境を整え看護師ファーストを実現しています。
コールセンターによるタスクシェア(2023年 看護協会最優秀賞アワード受賞)について、詳しくはこちらをご参照ください!➤➤https://lecaldo.co.jp/call-center/
また、トータルケアには大学院で専門看護師習得のための大学院進学制度を設けています。大学院に通う学費を会社で一度貸与し、大学院で勉強しながらトータルケアでアルバイトとして働いて、専門看護師取得後トータルケアで5年間働くことによって、貸与した学費を返還しなくて良い制度を設けています。
看護師が笑顔で長く働くためには、私生活でも仕事でも輝きながらいられるような環境造りを心がけ提供することが大切。看護師一人一人が思うように自分らしいキャリアを積んでいけるように、会社が全力でバックアップしています。
訪問看護師さんの経験談
訪問看護師・吉武さん:私は病棟看護師を経験してから訪問看護師になったのですが、基本的にはやったことがないケアが多かったので、おむつ交換から全部見ていただいていました。ケア後には丁寧に振り返りをしていただいていました。できていないケアに関しては、そのケアが実践できる患者さんに訪問できるよう組んでいただきながら、経験を積んでいました。
まとめ
✔看護技術チェック表を用いながら、一人一人の成熟度に合わせて看護ケアの実践を積んでいく。
✔先輩訪問看護師と一緒に確認しながらケアを実践し、終了後にできていた部分・足りなかった部分の振り返りを行う。
✔3ヶ月間は同行訪問の中でしっかり看護技術を磨き、以降は徐々に単独での訪問を開始する。
✔訪問看護師としての成長だけでなく、一人の人間として自分らしいキャリアを積んでいけるようなバックアップをトータルケアでは行っている。
トータルケアでは採用説明会を毎月行っています。新卒看護師向けの会もあります。こちらもチェックしてみてくださいね!
コメント
コメント一覧 (1件)
[…] トータルケアの取り組みとして一番特徴的なのは、「看護師が働きやすい環境づくり」だと感じました。トータルケアでは、勤務希望を提出した後、管理者のシフト調整がなく、看護師が提出したシフトがすべて通るようなシステムになっています。(詳しくはこちらをご覧ください)そのため、看護師さんのライフステージ・ライフスタイルに合わせながら働く時間・頻度を調整することができます。 […]