おむすびや居場所から、安心して暮らせる地域に|大阪府八尾市・小鹿千秋さんにインタビュー!

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「みんながいつでも誰でもふらっと集まれる茶の間を作りました。」
これまでの看護師の経験を地域に活かし、地域住民の健康を守り孤立させない社会を作る場所、「おかえり処 お結びころりん」「おむすびスタンド」「jikka」を立ち上げた、小鹿千秋さんにお話を伺いました。

今回の記事はこんな人におすすめ!

  • コミュニティナースに興味のある方
  • 地域に根ざした看護に興味のある方
  • 看護師として働きつつも「地域づくり」に興味のある方
名前
小鹿千秋(こしか・ちあき)さん
看護師として集中治療室、手術室、内科病棟、がん病棟、訪問看護などを経験。自身の子育て中に社会的孤立を感じたことを機に、赤ちゃんから高齢者までが家のように集まれる地域食堂「おかえり処お結びころりん」を立ち上げる。住民のすぐ隣にいる看護師「コミュニティナース」として人々と「日々の嬉しいや楽しい」を作りながら、地域の場づくりを軸に活動している。

おかえり処 お結びころりん(以下、お結びころりん):大阪府八尾市にある、地域内に潜む孤独を防ぐことを目的とした地域食堂です。千秋さんの実家である、酒屋の倉庫を改装して生まれました。赤ちゃんからおじいちゃんおばあちゃんまで、みんなが集えるお茶の間を目指しています。

おむすびスタンド【むすんで、にぎって。】(以下、おむすびスタンド):おむすびの名の通り皆さんの良縁を結びたい、美味しいおむすびで皆さんを笑顔にしたいそんな気持ちで一つ一つ丁寧に、真心込めてお結びをお届けしています。

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おむすびスタンドの外観。古くからの日本家具や古道具が活躍しています。全ていただきものなのだとか。

看護の道に進んだきっかけを教えてください

小鹿千秋(以下、小鹿):看護師を目指したきっかけは自身の身近に看護師の存在があったからです。医療現場のドキュメンタリー番組を見ていたことや、母親が看護師に興味があり、私も自然と看護の道に興味を持つようになりました。偶然にも母親の知人が有名な病院で看護師として働いており、実際に関わるなかでその方に憧れも抱きました。

ー看護師として働いてみていかがでしたか

小鹿:最初は超急性期病院に勤めました。私は学生時代から循環器に興味を持っていたので、一年目から循環器集中治療室(CCU)を希望しました。命に直結するため、恐怖心や不安も大きく、目の前の仕事についていくことに必死でした。その後、手術室・一般病棟・終末期など幅広く経験しました。

お結びころりんを立ち上げた理由を教えてください

小鹿:多世代の孤立や孤独を防ぎたいと考え、おむすびころりんを立ち上げました。

私がCCUで働いていたときの話ですが、退院予定の患者さんが当日になり「家は独りだから嫌だ!」と退院を嫌がることが度々ありました。病院にいるとカーテン越しにでも話をされる方も多く、誰かと居るという安心感があったようです。私自身、第一子を出産後誰とも話さない日が続き、「これが社会的孤立なんだ。」と感じました。当時「帰りたくない!」と言っていた方の周囲に、お結びころりんのような場所があれば、もしかしたらもう少し円滑に退院が進んでいたかもしれません。

他にも心不全で入退院を繰り返す方で、足の浮腫が酷い・少し動いただけでも息切れがするなどの症状を見逃し、治療が遅れてしまうことがあります。酷くなる前に来院していたら内服薬の調整のみで済んだのかもしれません。ギリギリの状態になるまで気付かないことが高齢者の一人暮らしの現実です。些細なサインに気付いて「病院に行ったほうがええで。」と伝える。それが今のお結びころりんの日常にはあります。

ーお結びころりんでの、印象的なエピソードはありますか?

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年齢関係なく、誰もがいつでも安心して過ごせる場所。「入店時には、初めての人でも常連さんでも『いらっしゃいませ』ではなく、『おかえりなさい』と、お帰りのときは『いってらっしゃい』と声をかけるお店です」ー矢田明子著・コミュニティナースより

小鹿:みんながおせっかいになっていくことです。立ち寄ってくれた方同士が「ただいま」「おかえり」と声を掛け合っていたり、お茶を運んでくれたり、お皿を洗ってくれたり。自然とおせっかいの輪が広がっています。

実際、私よりも地域の方々の方がお互いを知り尽くしていますし、その会話を聞きながら、私もそれとなく情報を蓄えています。介護福祉士である母が店主として立ってくれているので、入院した・体重が減った・朝食が食べられなかったなど、些細なことも耳に入ってきます。「今日はこの位のおむすびひとつにしたで。」「ちょっと痩せや。」など、みんなでおせっかいをし合うような感覚です。

以前、常連の方で脳梗塞になってしまった方がいます。その方は夏祭りがとても好きな方だったのですが、医師から「夏祭りは脱水になる。あかん!」と言われていました。そこで、お結びころりんでクーラーをつけて夏祭りを開催したら良いのではないかと考えました。当日はご友人も招待し、盆踊りを子どもに教えたり一緒に踊ったりしてました。とても生き生きしていた姿が印象的でした。

おむすびスタンドを始めたきっかけを教えてください

おむすびスタンドの開店日は朝から100個〜120個ほど結んでいます。近所に住むママさん達が子育てや仕事の合間に、アルバイトとして手伝ってくれています。写真は菜の花のほろ苦い春の味がたまらない季節限定のおむすび。

小鹿:お結びころりんを立ち上げて約4年が経ち、私自身がまちに出向いてもっと活かせることは何かと考えたとき、やはり看護師であることが武器だと感じました。その際にやってみようと思えたのがおむすびスタンドでした。食べる量や買っていくものを見ながら、コミュニティナースとしてその方の健康を守ることができる。相性の良いアイデアだと思いました。私たちの目的は、おむすびを売ることではなく、つながりをつくることです。実際には、散歩のついでに購入してくださる方や、定期的に友人への手土産におむすびを購入してくださる方などがいらっしゃいます。おむすびがコミュニケーションのツールとして機能していると思うと、とても嬉しいです。

ー臨床経験はコミュニティナースとして働く今にも繋がっているのでしょうか

小鹿:臨床経験が活かせている部分は多いと思いますが、地域では上手くいかないこともあります。退院後の生活や地域のことを理解しているつもりが、全く理解していませんでした。看護師として幅広い診療科を経験してきましたが、地域で役立つのは整形外科と皮膚科ではないかと感じています。地域に出向き「足腰が痛い。」「手のブツブツが気になる。」など、身近な訴えが多い印象を受けました。

私は両方の科を経験していないので、腰痛に効く体操や肌のケアの仕方・糖尿病のフットケアなど何も知らずに地域に出向いてしまいました。病院勤務ではあまり知り得ない知識や技術だったので、今も戸惑うことがあります。その戸惑いを拭いたいと考え、2年前に訪問看護の道に飛び込みました。

ー訪問看護の経験は地域で活かされていますか?

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小鹿:とても活かされていると感じます。生活を基盤として考え、その上で病気やリスクを察知できるのは臨床や訪問看護の経験で磨かれたものだと思います。そして全ての物事には理由があって、ひとつひとつを常に考える力を持つことが必要だと感じています。

お結びころりんにいると、住民さんの生活に驚くばかりです。今まで病院で行っていた退院支援は生活に寄り添うとは言い難い支援だったのかもと。振り返れば、自分の見ている世界が狭かったなぁと思いますね。知識や技術・経験を増やし必要なときに使えることが、それぞれのニーズに合わせた看護へ結びつくのだと思います。訪問看護では臨床経験年数が大事ですが、人間としての経験値も大切ですね。

今後の目標について教えてください。

小鹿:今、メンバーと新しい居場所づくりにチャレンジしています。「実家のようなjikkaをつくる」というプロジェクトなんですが、一軒の空き家をみんなの「jikka」にしようとしています。掃除やリフォームなどを地域の方々と行い、愛着の湧く場所になって欲しいですね。一階を地域の方々が自由に出入りできる場所、二階は働く女性専用のシェア空間にしようと考えています。いずれはコミュニティナースも常駐してほしいです。
*2022年6月末まで、「CAMPFIRE」でクラウドファンディングに挑戦中!
https://camp-fire.jp/projects/view/582131

看護学生に伝えたいことやメッセージをお願いします!

小鹿:「やれば良かった。」という後悔に縛られないことを伝えたいです。医療業界は事物が起こった後にその物事の重大さや新たなシステム・施設が必要だと気づくことが多いですが、その後悔に縛られて欲しくないです。

これから看護師を目指す方には、ルールを守りつつさまざまな角度から柔軟に対応して欲しいと思います。自分が思う成果に結びつかなかったとしても、落ち込まないで欲しい。誰かのためを想い行動したことを誇りに感じてください。そしてその想いがその方にも届いていれば良いなと思います。

看護は正解と正解のない世界が混在します。だからこそ固定概念は捨てた方が良いと思います。これからの時代、さまざまな経験や広い視野は看護に携わる人間として大事です。人間性を重視する必要もありますね。

私は柔軟に考えることが苦手でしたが、お結びころりんを始めてから自分の考えが広がりました。学生さんにはさまざまな世界に飛び込み、物事を柔軟に考えることや広い視野を持つことを覚えてもらいたいです。そして人と関わり「こんなに面白い世界がある!」と知り、自身の看護に活かして欲しい。看護の道に進まなくとも社会人として、自分の引き出しを多く増やせるように願っています。

ー千秋さん、取材にご協力いただきありがとうございました!常にチャレンジし続けるパワフルさに圧倒された取材でした!

千秋さん(左)、八尾市で千秋さんとともに活動する新井さん(左上)と。

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