「私が誰かの環境になりたい」それが私が看護を学ぶ理由。|看護学生・松本菜乃花さんにインタビュー!

皆さんは充実した看護学生生活を送れていますか?多忙な看護学生生活を送りながらも、空いた時間で旅を続け、看護にとらわれない自分のありたい姿を追求した、(2022年度当時)看護学生の松本菜乃花さんにインタビューをしました!「看護は手段だ」と気づかせてくれる菜乃花さんの考え方、生き方を、ぜひご一読ください。

今回の記事はこんな人におススメ!

  • 看護師をめざしている学生さん
  • 看護学生の日々の過ごし方を知りたい人
  • 就活に悩んでいる人

今回インタビューさせて頂いたのはこの方!

菜乃花さん

松本菜乃花(まつもと・なのか)さん

東京都出身。幼少期と高校生の頃の出来事をきっかけに看護学を学びたいと思い、4年制大学の看護課程に入学。4年間の学生生活を送りながら、いろんな地域を訪れ、さまざまな人の生活の在り方を学ぶ。現在は愛媛県に就職し、看護師として働きながら環境づくりにも挑戦している。

目次

目の前の人を元気にするために、看護の知識が必要

「看護」という選択肢が一番最初に浮かんだのは、小学生の頃でした。幼稚園から小学校にかけて、約5年間ほど小児喘息がひどかった時期があったんです。そのときに、看護師や養護教諭と接することが多く、「私もこんな風に人を癒せる存在になりたいな」とぼんやりと思い始めるようになりました。

そして、高校の部活動で起こったある出来事もきっかけでした。高校の部活動で精神的に不安定になってしまう部員が複数人出てきてしまったんです。私は部長をしていたのですが、自分の想いだけでは人は助けられない現実に打ちのめされました。

その出来事をきっかけに、心の面を助けるためには知識が必要だということを学びました。将来は、人をより元気な状態にするために必要な知識や技術を学びたいと思うようになりました。心理職か看護職のどちらかを考えたのですが、看護職を選びました。
そのときから「看護師さんになりたい」「病院で働きたい」というより、看護の知識や技術を身に着けたいと考えていました。

ーどうして心理職ではなく看護職を選んだのですか?

部活での出来事があった時期に、祖父が他界してしまったんです。祖父のことが大好きだった祖母も心身ともに体調を崩してしまいました。そのときに、心と身体の繋がりに気が付きました。
心に関しての知識・技術だけでは人を助けられないのではないか、心と身体のどちらにもアプローチができるのは看護なのではないかと考えるようになりました。

また、心理職に比べ看護職は、トラベルナースや国際看護師など比較的現場の幅が広いイメージがあり、その働き方の多様さも看護職を選んだ理由の一つです。

看護学だけでは足りないかもしれない

1年生の頃は、目の前の授業や課題を一つ一つ一生懸命こなしながら、看護の概論や理論などをインプットしていました。

しかし、1年生で行った基礎実習で初めて患者さんと対面したときに、今まで習ってきた看護の座学を、そのまま目の前の患者さんに適応できるわけではないことに気が付いたんです。
人はもっと多種多様で奥深く、その人を理解するために必要なことは看護学の中だけに収まり切っていないのではないかと思うようになりました。

何か看護以外のことに手を出したいと思い立ち、NPO団体の制度を使って日本各地でボランティアを始めるようになりました。私は農業の分野が好きで、自然と調和した生活、本質的に豊かな生活を感じられる場所を中心に訪れ、徳島、愛媛、島根、福井、群馬など、4年間で10以上の地域を訪れました。

学内では授業も実習もしっかり受けて、休みの日には地方を訪ねることを繰り返していました。実習最終日の夜に出発し、実習が始まる前日に帰ってくることもありました。

ーその中でも一番印象に残ったのは何でしたか?

一番印象に残ったのは、愛媛を訪れたときでした。そこで初めて「私ってこういう人間なんだ」と気が付くことができました。というのも、私が訪れた愛媛県最西端の半島部に位置する、人口40人に満たないその小さな集落では、どんな私でも受け入れてくれるという安心感が築かれているような環境で、周りの方々が私をすごく解放させてくれたと感じているからです。

自分が感じていた自己像が崩れ落ちて、本当の自分の姿をいい意味で受け入れることができるようになった感覚でした。まじめな看護学生という自分の思っていた自己像を脱ぎ捨てて、楽しいことや人と関わることが好きな普通の大学生なんだということに気づかせてくれました。

ーその地域の町民さんは、どのような人柄なのですか?

地域内外を問わず人を巻き込むことが上手で、遠慮なく役割を担わせてくれる印象です。
何かをしようと思ったときに、他の住民さんと積極的に声をかけ合うなど、協力や相互扶助を当たり前として考えている人が多いと感じています。その点については”人が少ないからこそ”だと感じています。

世話好きなところもあり、地域の子供やお年寄りの方を住民さん皆で見守っていて、目には見えない、安心できるネットワークが存在している印象もあります。誰かの成長や活躍を見守る心は、地域内だけでなく地域外から訪れた人に対しても波及していると感じます。この地域では、日常生活の中で人生の知恵や何かを乗り越えるための知恵を学びました。

ーどんな人にも尊敬の気持ちを抱いて、学べる環境に身を置こうとしている姿勢がすごいなと思いました!

人のネガティブな部分や苦手な部分を探すより、一見良くない印象を捉えてしまったとしても、その点を塗り替えるような、良い部分や尊敬する部分を探した方が自分の気持ちが豊かになると思っているので、昔から大事にしています。

就活の時期。私はなぜ、旅を続けてきたのかを振り返る。

領域別の実習が落ち着き始めた3年生の9月頃、改めて就活のことを考え始めました。それまで就職先として考えていたような病院にも訪問してみたのですが、どうしても自分がそこで働くイメージが湧きませんでした。

そこで、「私はどうして今まで地方を訪れて、自分とは違う考えを持った人のところに熱量をもって飛び込んできたのか」に立ち返って考えたとき、そのパワーの源は『人』だと気が付きました。
自分とは違う、その地域に住む人々の考えや想いを見たくて見たくて旅を続けてきたこと、人を癒したい、安心させたい、その人らしくいてほしいという想いが行く先々で芽生えていることに気が付きました。

人を癒す方法、その人らしく生きていけるように支える方法を知識として学んできたことが私の強み。今までやってきた看護学とボランティアが初めて結びつき、「今までたくさんの人に学ばせていただいた分、私が今まで学んできたことを活かしたい」という進路の軸が決まりました。これが3年生の終わりごろでした。

そこから具体的に就職先を考え始めるようになったのですが、働くためにどこかに行くとか、働くために何かをしたいのではなく、どこで生活するか、といった”生活の中にある働き方”を大事にしたいことに気が付きました。それなら、まだまだ色々な生活を見たいと諦めきれず、その中から自分の進路のヒントを得るために、4年生の5月頃までは”人に会いに行く旅”を続けました。

あなたのやりたいことは、それで達成できるの?

5月の旅で島根県を訪れました。島根で出会った方に進路について尋ねられ、その当時考えていた僻地の病院への就職を答えました。

すると、「あなたのやりたいことは、それで達成できるの?」と問いを頂いたんです。

私のやりたいことは、みんなが自分らしくいられる環境をつくること。自分のやりたいことを実現させるために当時考えていた僻地の病院で、それが達成できるかどうか分からないことに気が付きました。
そのとき、私が真っ先に想いを抱いた自分らしくいられる環境というのは、私自身を開放してもらった愛媛県でした。その自分らしくいられる環境は、住民さん達が作っているものです。そこにこそ学ぶべきものがあるのではないかと考えました。看護師としてではなく、一人の人間として環境づくりを学ぶために、私にきっかけを与えてくれた愛媛県のその地域で就職をしようと決めました。決心したのは4年生の6〜7月ぐらいのことでした。

相互扶助、おたがいさま、自然な助け合いなどを学びつつ、私が学んできた看護を活かせる方法を考えたとき、町職員として町に入って診療所に務めることができれば、物理的にも町民のみなさんに看護の力を還元しながら、町づくりと看護を掛け合わせて働くことができるのではないかと思い立ちました。
採用面接の際には、町職員として診療所に務めながら、地域の中にも飛び出していきたい旨を打診をして応援して頂けることになりました。町のニーズと自分の想いが合致していることを確認し、8月~9月頃に就職が決定しました。

「私が誰かの環境になる」

私が大事にしている考え方として、「私が誰かの環境になる」ということを意識しています。誰かにとって、自分はここにいていいのだと気付いてもらえるような人間でありたいですし、そんな生き方をしていきたいと思っています。4年間さまざまな場所を訪れて出会った方々が徐々にその想いを確信に変えていってくれました。

また、「美は見る者の目に宿る」という言葉が好きです。美しさというのは、そこにあるのではなくその人の目の中にあるという意味です。何かを見たときに、価値のないもの・魅力のないものとして捉えるか、価値あるもの・美しいものとして捉えられるかどうかは、その人の持つ目次第だという言葉です。人やものごとのあらゆる側面を感じて、価値あるもの・美しいものとして捉える目を持つことを大事にしていきたいと思っています。

人とのコミュニケーションで大事にしていること

訪れたある地域で、「縁が深い人とはまたどこかで繋がるんだよ」と教えてもらったことがあります。人との繋がりを存続させるために無理はしないようにしています。頑張っているな、今伝えたいことがあるなと思ったタイミングで、自分の心の赴くままに手紙やメッセージを送ったり、声をかけるようにしています。「私はあなたのことをちゃんと気にかけているよ」というメッセージが届くように意識しています。

新しい町で町民になっていくプロセスを楽しむ

これからいよいよ新しい土地での仕事が始まりますが、まずは自分自身が町民の一員になれるように溶け込んでいく過程を楽しみたいなと思っています。各地域のモデルケースはたくさんありますが、そのモデルケースが私の住む地域の住民さんにとって、必ずしも求められるものとは限りません。町民さんが生活や人生を送る上で本当に困っていることや求めていること、幅広い視点での健康・看護の面でのニーズを吸い上げることができるようになりたいです。病院ではなく、自分自身が住む地域で看護を広げることの意義は、より生活に密着したニーズを拾いあげられる点にもあると感じています。

これから生活環境が変わる中で新しく出会う人も増えると思いますが、一人一人との繋がりを今まで以上に大事にして、教わる精神・学ぶ精神を持ちながら、すべての住民さんから知恵を授かっていきたいです。
今考えているのは、町民さんと農作業などを共にしながら、作業中に生まれる自然なやりとりの中で町民さんの困りごとを拾って、健康相談などができたらいいなと思っています。ただその中でも、町民さんのためになるからと無理をすることなく、自分の気持ちに素直に、私自身が”町民になっていく”プロセスを全力で楽しみたいと思っています。

現役の看護学生へのメッセージをお願います!

進路を考えるときに、大学の先生や周りの大人の方々にたくさんの反対をうけました。しかし逆に、そう言ってくれる人が近くにいてよかったなと思っています。反対の意見を頂くことによって、「確かに、なぜ私はその道に行きたいのだろう」と考えるようになり、それを色々な場所に足を踏み入れるアクションに移していくことで、私なりの答えを最後まで追求していくことができました。

何か自分の中にくすぐる想いがあるときや、想いに気付いたときに、直近でその想いがかなわなかったとしても、いつまでも想いを持ち続けて欲しいと思います。自分の中でくすぐる想いは自分の中にしかないものです。いつか花開くときや、何かチャンスを掴めるときが来ると思います。
看護師ならこうあるべきというようなセオリーではなく、自分の中にある想いを大事に持っていて欲しいです。それが、幅広い人間を相手にしていく看護界全体の多様性や裾野を広げていくことにも繋がると信じています。

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