第2回・世界のウチナーンチュ・ナースデイ〜第7回・世界のウチナーンチュ大会連携イベント〜【外部イベント参加レポート】

世界のウチナーンチュ・ナースデイ(WUN)とは、5 年毎に開催される沖縄県主催の第 7 回世界のウチナーンチュ大会(The 7th WorldwideUchinanchu Festival : WUF)の関連イベントとして行ったものです。海外で活躍されているウチナーンチュ・ナース(沖縄の看護師)との交流の場となっています。今回、第2回目は藤井まいさんをゲストスピーカーとしてお招きし、「国際保健の仕事を通して見えてきた看護職の行う医療保健への貢献」というテーマで、海外での看護業務についてお話を伺いました。その後、ゆんたくテーブルでは3つのグループに別れ、それぞれのテーマについてディスカッションしました。
そのイベントの様子をご覧ください!

今回の講師はこの方

藤井 まい(ふじい・まい)さん
看護師・保健師・養護教諭。琉球大学医学部保健学科卒業。卒業後は、沖縄県米軍基地内で留学し、ミシガン州立大学大学院修士号を取得。その後、東京大学大学院医学研究科で、保健学修士・博士号を取得する。沖縄県の総合病院で看護師を10年間経験し、世界保健機関や2国際協力機構での業務に従事し、現在はアジア欧州財団(シンガポール)でコロナウィルス感染症対策のため途上国への物資配布に携わる。
目次

タイムテーブル

9:30〜9:40 開会式
9:45〜11:15 講演『国際保健の仕事を通して見えてきた、看護職の行う医療保健への貢献』:藤井まい
11:30〜12:30 ゆんたくテーブル

【テーマ A】 日常生活からみた日本とアメリカの医療制度の違い
ゲストスピーカー:メディナ(平) 裕子(めでぃな・ゆうこ)さん
宜野湾市出身、沖縄看護学校卒業。浦添総合病院と県立中部病院勤務後、2000年に渡米。WesternGoverner University で看護学士取得後、Walden University で看護学修士を取得。NP(診療看護師)認定。
現在はテキサス州ダラス郊外唯一の日系クリニックで日本人駐在者にファミリーナースプラクティショナーとして医療サービスを提供している。

【テーマ B】 ハワイの病院での院内感染対策
ゲストスピーカー:ヴァンオメン(稲嶺)里香(ゔぁんおめん・りか)さん
ハワイで2018年に修士課程を修了した後、クイーンズメディカルセンター(一般病棟及び院内感染対策室)で2021年の夏まで勤務。
京都に在住。日本では講師を行ったり、HawaiiのAAPINAというグループのミーティングに参加したりなど、現在可能な範囲での看護活動をしている。

【テーマ C】 ダイバーシティの中で働く
ゲストスピーカー:玉城あゆみ(たましろ・あゆみ)さん
日本の美術大学からアメリカの美術大学に編入。卒業後、博物館や海外青年協力隊で南米コロンビアの古文書館で勤務。その後、アメリカで正看護師を取得。
現在、Montefiore Medical Center (モンテイフィアー メデイカル センター) NICU看護師。

12:40〜12:45 閉会式

グローバルな看護分野の概況

看護分野の特徴として、以下が挙げられます。

・看護師免許制度のない国もある
看護師免許は国によって定められているため、看護師免許がなくとも働ける国もあります。そのため医療の知識がない看護師もいらっしゃいます。
・村に在住し、活動する人材もいる
病院や施設などには所属せず、看護職として働いている方もいらっしゃいます。その中でも助産師は医師がいないところでも活躍しています。
・国内で看護師を養成しても、海外の待遇の良い国に流出する
自国で仕事しても生活はしていけるのだが、より高額な給料を得られるところに行ってしまう。優秀な看護師であればあるほど、海外にいく。
すぐに貧富の格差は埋めることができない。

これまでの保健や看護の仕事

7カ国に物資配布支援
対象分野:感染症。主にCOVID-19、結核、HIV
主に新型コロナ用医療個人防護具、検査キットの提供をしています。もともと、インフルエンザ蔓延が起きた際の備蓄としていたものが、COVID-19の蔓延によって必要となりました。そのため、国や関係機関との調整や倉庫物資の確認、必要な国への移送を行なっています。

ウクライナへの軍事侵攻
2022年2月に侵攻が開始され、国が壊滅的被害を受けました。
死者・負傷者が多数出ており、市民が生活できない状況です。隣国や別地域に避難する人々もいらっしゃいます。

ウクライナ侵攻による健康への影響
・多くの傷病人
・感染症のワクチン接種ができない:移住してもその国にワクチンの在庫がないため、受けることができません。
・感染症リスク:人が集まると感染リスクは高いため感染症は起きやすいです。
・水環境、衛生状態の悪化
・医療機関のひっ迫:組織そのものが使えなかったり、人材不足にもなっている。またインフラストラクチャー(電気・水道・ガス)が使えなくなるため、医療も滞ってしまいます。
・心のケアを必要とする人

仕事を通して見えてきたこと

私は、高校まで県外で過ごし、看護職を目指すため沖縄の学校に進学しました。沖縄での生活や成長の全てが現在に生きています。当時の沖縄は、アメリカ人が街にいることやアメリカの文化が当たり前でした。また自分のカラーを受け入れてくれたため、自分を表現することができました。

これまでの仕事を通して、世界の問題に目を向ける姿勢が大切だと感じています。
過去と現在の状況は全然違います。そう考えると、未来はより違ってくるでしょう。私がみてきたことも、私の経験でしかなく、他にもさまざまな問題があります。それぞれの分野で取り組んでいる方の目線は、また違ってくるでしょう。看護の分野で貢献できることを考えていき、日々アップデートしながら現在の問題解決に向かいたいと思っています。

参加した看たまたちの感想

Sさん:国際保健に興味はあったものの「実際にはどんな活動をしているの?」という感じでした…。しかし、実際に国際保健の分野で活躍されている方のお話を聞いて、「その国やそのときのニーズに合わせた保健活動を行っている」ということを知ることができました。そして、世界の困難な状況を少しでも改善するために看護師ができることはたくさんあるということを感じることができました。世界に目を向けることでしか見えないものがたくさんあるということを知り、将来は国際看護や国際保健の分野で活躍できるようになりたい…と改めて思いました。

Oさん:今回は、世界で活躍しているウチナーンチュ・ナースのお話を聞けるということで参加させていただきました。講師としては4人の方がお話をしてくださっていますが、その講師の方々以外にも参加者でも以前はアメリカで働いていたナースや、ハワイで働き現在は社長をしているという方もいらっしゃりすごく刺激になりました。私自身、沖縄生まれ沖縄育ちで、あまり海外というところに目を向けず、海外進出なんて違う世界のことだと思ってきました。こんな小さい島から出て、すごい活躍をしている先輩方のお話を聞いて自分も将来このような輝いた人になりたいと思いました!

Rさん:社会の問題だと感じていることを、藤井先生は「国際的には」という視点から現状を把握し、アジアやアフリカといった地域間を比較していました。藤井先生は、戦争中のウクライナからの難民に対しCovid-19感染対策のための物資を提供する支援に携わっており、自身の日常に存在する問題と国際的な問題が結びついた結果、行動に移すことのできた支援だと思いました。俯瞰して問題を解釈するよう心掛けることが、身の回りに遍在する問題を考える際のヒントになると学びました。

ゆんたくテーブルでは「ダイバーシティの中で働く」というテーマに参加し、ニューヨークなどの医療施設の看護師として働く経験を伺いました。中でも「人材不足が問題となっているのに、日本の医療機関がダイバーシティになっていかないのはなぜなんでしょうか」という発言が印象的でした。多様な背景をもつ人材を活用している海外の職場は、職員も患者もそれぞれ事情の異なる「個人」であると認識していました。ダイバーシティ実現のための教育が継続的に実施されるという話や、家族ごとに母親役割・父親役割を担う人を外見だけでは判断できないため配慮が必要であるという話も伺いました。ダイバーシティが実現している環境と比較すると、日本のダイバーシティに対する考え方は、少数者や社会的立場の弱い人に配慮するというノーマライゼーション的な考え方から脱却しきれていないのかもしれないと感じました。

今回のイベントを通して、私の生活とは異なる環境の話をたくさん吸収できました。将来、社会に対し「看護」を発揮する方のお話を聞くと大変刺激になります。「看護」をもっと探求したいという思いがさらに強くなりました。

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