自分で自分の可能性を狭めないデイサービス、IKIGAI。利用者の想いを尊重し可能性を広げる、「自立支援型」を目指す場所が愛知県西尾市にあります。今回は管理者の新美さん、看護師の伊藤さんにお話を伺いました。
今回の記事はこんな人におすすめ!
- デイサービスがどんなところか知りたい
- デイサービスで働く看護師に興味がある
- 患者さんの生活に寄り添う看護や支援に興味がある
今回お話を伺ったのは…
新美 杏介(にいみ きょうすけ)さん(以下、新美) 「自立支援型」のデイサービスIKIGAIの管理者であり、自身も理学療法士として利用者さんへ日々向き合っている。株式会社介護コネクティブ代表取締役・寺本圭佑(てらもと けいすけ)さんとIKIGAIを立ち上げる。
伊藤さん(以下、伊藤)
看護学校を卒業後、精神科へ勤務。結婚や出産・専業主婦を経て、現在デイサービスの看護師として働いている。「絶対に否定しない、その方を受け入れる」という信念を持ち、利用者様の想いや希望を叶える、寄り添った看護を行っている。
新美 杏介さん:IKIGAIの立ち上げや今後の展望
デイサービスIKIGAIとは?
愛知県西尾市にあるIKIGAIは、株式会社介護コネクティブが運営するデイサービスです。
IKIGAIは介護コネクティブが描く「自立支援型の日本」を目指し、利用者の想いを尊重し可能性を広げるデイサービス運営に取り組んでいます。
介護コネクティブは保険内と保険外のサービスをミックスし「誰もが自分らしく生きる!」社会の実現を目指し、自立支援型の社会を構造化するための第一歩としてIKIGAIを立ち上げました。
ーはじめに管理者の新美さんにIKIGAIの立ち上げから今後の展望など、さまざまなお話を伺いました。
IKIGAIを立ち上げることになった経緯を教えてください。
新美:寺本さんに「デイサービスをやらないか?」と誘われたことがきっかけです。寺本さんの介護業界に対する考えや想いを知っていたので、「寺本さんと一緒ならやる!」と意気投合しました。
介護コネクティブは「介護業界の未来と笑顔を共に創る」という理念を掲げ、自立支援型の日本を創ることを目指しています。デイサービスや訪問看護にも理学療法士(以下PT)が自分たちの住む地域やまちに根付き、保険内と保険外の両方からその方の生活を支えることができる場所、その一歩がデイサービスだと考えています。
IKIGAIの特徴を教えてください。
新美:食事の際に利用者さんが自分で使用した食器はご自身で片付けるなど、自分で可能なことはご自身で行ってもらうようにしています。
以前、病院から退院した後、自ら買い物に行くことや食事をすることをやめてしまった方がいました。その方がここで料理の練習をするようになり、その後ご自宅でも家族に料理を振舞うようになったんです。また、ご自身で買い物にも行くようになったそうです。少しずつですが、利用者さんが自ら行動する場面が増えており、自立支援の形が現れているのではないかと思います。
また、専門的な知識・技術を持ったセラピストが機能訓練や予防の観点から関わることができます。デイサービス内で利用者さんが受動的にならないようにマシンを多く取り入れ、自ら身体機能の改善を図れるようにしています。機能訓練の先を見据えた予防を提供できる部分も特徴ですね。
利用者さんとの関わりで心掛けていることを教えてください。
新美:時間をかけることも大切だと思います。例えば、移動する際に僕らが介助した方が早いこともありますよね。もしくは僕たちがその動作を遂行してしまった方が早いこともありますが、僕は急かさずに待っています。できるだけご自身で行ってもらい、過介助にならないように気をつけています。
また、ご本人の気持ちを傾聴し「何がやりたいか」を聴くことですね。僕はセラピストなのでそういった想いを聴くことを心掛けていますが、全てのスタッフが上手くできるとは限りません。そこで利用者さんとしっかりとコミュニケーションを取り、誰も取りこぼしなく想いを聴くことができているかを確認するようにしています。
どのようなスタッフさんが働いているのでしょうか。
新美:生活相談員・機能訓練指導員(理学療法士・作業療法士・柔道整復師)・看護職員・介護職員・保育士がいます。また介護業界が未経験の方もいます。
従来の介護のかたちに捉われたくないという考えもあり、あえて介護業界での経験が少ない方も一緒に働いています。IKIGAIは従来の介護である「お世話型」ではなく、「自立支援型」を目指しています。やはり異なる業界の視点から気付かされることもたくさんあります。さまざまな角度から関わり方を模索できるメンバーと働ける点は良い点だと考えています。
今後、思い描くIKIGAIの姿とは
新美:将来的に「自立支援型の日本を創る」ことを目指しているので、ここも自立支援型デイサービスを目指していきたいです。少しずつ自立支援の形が見え始めているのですが、まだ全員に届けられているわけではありません。それが今後の課題だと考えます。この場所に来て、身体機能を改善し、実際に自宅に帰ってから行える動作を増やすことができると良いと考えています。そして社会やコミュニティに参加し、高齢者の方が滞りなく生活できるような場所にしていきたいですね。
また、寺本さんや僕の地元である知多半島で事業を展開していきたいと考えています。寺本さんは在宅の医療や介護を受けたくても受けられない地域に住んだ経験から、「地元をなんとかしたい!」と考えたようです。その考えや想いに賛同し、知多半島を盛り上げ、ここから介護業界の未来と笑顔を共に創っていきたいですね。
伊藤さん:デイサービスでの役割や仕事のやりがい
ー続いては、IKIGAIで働く看護師さんにデイサービスでの役割や仕事のやりがいについて、インタビューをしました!
IKIGAIの良いところを教えてください。
伊藤:この場所自体がとても明るいですね。スタッフは若い方が多いですが、それぞれ、専門的な知識も技術も持ち合わせています。
デイサービスは、家では何もできない方や家族が預かって欲しいと利用を希望される方が利用すると思われているかもしれませんが、IKIGAIは違います。自分でできることを増やすために、動ける体づくりを自発的に行う場所だと思います。
デイサービスでの看護師の役割を教えてください。
伊藤:自分が学生だった頃、デイサービスがどのような場所かも知りませんでした。そのため、最初は何をしたらよいのか分からず戸惑いました。デイサービスでの仕事は内服薬の管理や利用者さんの健康管理・緊急時の対応などが主です。利用者さんよりも一緒に働くスタッフから看護師がいるだけで安心感があると言っていただくこともありましたね。
これまでに印象的だったエピソードを教えてください。
伊藤:パーキンソンの症状が重度の方が、とても綺麗なハンドメイド作品を作ってきてくれたことがありました。自分でデザインを選び細部にまでこだわりを持ち、製作したようでした。その方にとって、作品を作ることが生きがいのように感じたんじゃないかと思います。
もちろん、自分の思い通りにはならない葛藤はあったと思います。身体が動かないから「ここはもっとこうしたい!」と工夫をされて作ってくれたことを考えると、応援したくなりますね。
さまざまな方と関わるなかで意識していることはなんですか?
伊藤:意識していることは絶対にその方を否定しないことです。ここには認知症が進んでしまい、ご自身のことが分からなくなってしまった方や、入浴時に衣服の脱衣に嫌悪感を示す方など、さまざまな方がいます。
例えば、利用者さんが「お風呂入りたくない」と言ったとしますよね。私は「そうなんだ」と一旦受け入れるようにしています。その方と対話をしているうちに理由を教えてくれるからです。そして、自然な流れで入浴に誘導できるような環境を作るようにしています。必ずその方を一度受け入れ、真っ向から否定しないことを心掛けています。
伊藤さんが考えるデイサービスとは?
伊藤:私は「なるべく長く自宅で過ごすために助けられる場所」がデイサービスだと考えています。施設に入所後、何らかの理由で病院に戻ってしまうことがあります。私はそれを減らしたいですし、仮に戻ってしまったとしてもその期間を短くしたいです。可能な限り長く自宅で過ごせるように、お手伝いをしたいですね。また、ご家族やその方を助けることに携わりたいです。この部分は働くうえでのやりがいにもつながっていると思います。
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