生活の基盤が、いつの間にか天職に|デイサービスで働く花穂さんにインタビュー!【前編】

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デイサービスで働きながら、エステティシャンとしても活躍する安部花穂さんにお話しを伺いました!一見重ならないようにみえる二つのお仕事の共通点と、花穂さんの大切にされているお仕事への思いとは?
ボリュームのあるインタビューとなりましたので、デイサービス看護師編(前編)とエステティシャン編(後編)に分けてお届けします!

・デイサービスでのお仕事に興味がある
・病院からの奨学金を借りている人
・美容に興味のある人 必見です!

今回インタビューさせていただいたのはこの方!安部花穂(あんべ・かほ)さん
愛知県を拠点に、デイサービスで看護師として働きながら、エステティシャンとしても活動中。

目次

現在のお仕事に至る経緯

安部花穂さん(以下安部):看護大学2年生のときに中学時代の友人から、プチエステティシャンになったから少し来てほしい、顔を貸してほしいと言われたことがエステとの出会いです。美容に興味があったことや、自分がきれいになるのが楽しかったこと、誘ってくれた友人がとても楽しそうに働いていたことから、エステに通うようになりました。
大学3年生頃までの約1年間、エステに通っていましたが、あるときプチエステティシャンの友人の誘いで、友達限定のプチエステティシャンをはじめました。

ー学生の頃からエステティシャンを続けていらっしゃるんですね

安部:そうです。大学を卒業して、日赤病院に就職をしつつ、空いた時間でエステティシャンもしていたのですが・・・恥ずかしながら病院の看護師というのが私に全然合わなくて。就職してみて、「あれ、私って病院に合わないな」と感じ始めた頃、エステを本格的にやってみないかとお話を頂きました。これをきっかけにエステティシャン一本での生活が始まりました。
しかし、個人事業のため収入は完全歩合です。とても楽しくやりがいがあり、生きていてよかったと思えましたが、気持ちだけでは生きていけない、ご飯を食べていけないという状況でした。そこで、エステを続けるための収入の基盤を作ろうと思っていたところ、デイサービスの看護師のお誘いを頂きました。

病院では「命を守る」「助ける」想いが強いと感じていましたが、デイサービスはどちらかというと「病気と共に生きていく」イメージです。健康寿命を延ばしていくお手伝いができることが、私にはとても合っていると感じました。
また、出会った会社にも感謝しています。私は今の会社が大好きなんです。何がいいのかというと、一番は、その会社自体が一人一人のスタッフのことをこれでもかというぐらいに細かく見ている点です。「この子はこの部署で、こんな働きをしてくれるだろう」と、個性を生かしたアプローチをしてくれるおかげで、自分がここで働いていることに意味があると感じられます。この考え方は、ご利用者一人一人の個性を生かした関わりにも繋がっていると思います。

素敵な会社ですね!以前、病院で少し働かれていたときに合わないと感じたエピソードがあれば教えてください。

安部:東洋医学、西洋医学という概念があると思いますが、私自身のもともと持っているものがおそらく東洋医学寄りなのですよね。病院は基本的に西洋医学が中心ですが、本当の意味でその人の病気と向き合って治していくことを考えると、「本当にそれでいいのだろうか」と思うことが本当によくありました。薬を出して、飲んで、また違うことが起これば、薬を出して・・・と、本当にそれで治るんだろうかと思っても、何も言えませんでした。
ケアも時間との勝負で、効率重視でした。また、自分の感情が溢れそうになっても、看護師として感情を押し殺さなければいけない場面が多く、自分がどんどん死んでいっていると思っていました。

もともと就職先は奨学金を借りている病院だったので、そこに就職することは大学1年生のときから決まっていました。いざ就職してみると、雰囲気もなんだか合いませんでした。ただ、私の友人でも向いている子は向いていて、生き生きと仕事をしているので、本当に向き不向きがあると思います。私はデイサービスにきて本当によかったと思っています。

病院を退職した頃の心境

最初に勤めた病院を辞めるときの、決断の早さには秘訣がありますか?

安部:私の場合は心の調子と、次にやりたいと思える目標があったという点で辞める決断ができたのだと思います。4ヶ月目辺りから、少しずつ仕事に行けなくなってしまい、半分鬱状態でした。自分の心がついていけなくて、心が半分死んでいました。ぎりぎりの状態で仕事に行くなか、エステをしているときだけが自分の心の救いでした。
他の看護師さんも辞めたいという人は今でもいっぱいいらっしゃいますが、辞めないのは次の道がないからだと思います。次にやりたいことや、自分はこれで一生生きていくんだと思えるものが見つかっていなければ、私も辞めていなかったかもしれません。お給料や生きていく上での社会的な地位や、安心感が違いますもんね。

ー花穂さんにはエステがあったんですね

安部:当時はそうですね。しかし、今思えばデイサービスのお仕事に出会えて、改めて看護師という素晴らしさを感じられてよかったです。看護に戻ってきたのは、なにか導かれたのかもしれません。

安部:少し余談なんですけれども、5カ月で辞めようとしたときにすごい勢いで止められたんです。「やばいよ、やめたほうがいい」と周囲の人にも止められましたし、親にも絶交されました。奨学金を480万円借りており、4年間その病院で働いたら返さなくていい契約だったのですが、5カ月で辞めたら急に430万円の借金を背負うことになります。その点でも親に反対されていました。借金を背負ってまで辞める必要があるのかと。4年も頑張ったのにと。

辞めるときは「歌手になりたいんです!」と言って辞めました。エステティシャンをやると決めていましたが、まともにエステティシャンをやりたいと言うと辞めさせてもらえない気がしたからです。そうすると、当時の看護師長さんだけでなく看護部長さんとの面談までセッティングされました。看護部長さんからは「歌手になるっていうのは一握りなのよ。儲かると思っているの?」とお説教されたのですが、私は泣きながら「歌手になりたくてしょうがないんです」と言って突き通しました。その当時、ボイストレーニングには通っていたので、たしかに歌は好きだったのですけれども。
面白いのが、結局歌手になると言って辞めた1年後に、私は介護アイドルを始めていました。デイサービスのスタッフで集まって構成されたアイドルグループです!介護職を憧れの職業にしようと、介護福祉の業界を盛り上げるためのアイドル活動を1年間していました。実はきちんと歌手になっていたんです。

alt=”FEN-Girls 介護”ーすごいですね!

安部:いろいろなご縁ですね。私のやりたいことばかりやらせていただいて、デイサービスの会社には本当に感謝しかありません。

ー借金の返済期間は決まっているのですか。

安部:当初は430万円を一括で返済してほしいと言われました。ボーナスを貯めていましたが100万円しかなく、とりあえず100万円を先に返済し、あとは月に10万円を返済する契約で収まりました。想像していただけるか分からないのですが、完全歩合の個人事業主にとって月に10万円の返済はかなりきついのですよね。完全に職がない状態で毎月の10万円の返済に追われて、もうコンビニにも行けなくて、本当に生きるのに必死でした。

ー返済に追われる状況でも踏ん張ることができたのは、エステティシャンをやりたい思いからですか?

安部:そうですね。病院を辞めた当初は、本当に自分がやりたいと思う仕事であればお金なんて必要ないと思っていました。しかし、半年ぐらい経つと「いや、少し待てよ」「流石にお金がないというのはまずいぞ」と思いました。いろいろな意味でお金がないことはよくないことに気がつき、生活基盤を支えるお金を考え始めたときに出会ったのがデイサービスでした。

ー最初は生活基盤と考えていたデイサービスが、のちに天職と言えるようになったんですね。引き寄せ力がすごいです。

安部:しかもデイサービスのご縁をくださった方は、学生だったときに通っていた東京アカデミーという塾の先生でした。卒業後、病院を辞めてからその先生にたまたま出会い、デイサービスをご紹介いただいたので、すごくつながっていますね。

デイサービスのお仕事について

デイサービスでのお仕事のやりがいを教えてください。

安部:たくさんあります!病院では優先順位の高くなかった心のケアを大切にでき、その方自身の人間らしさを感じるときにやりがいを感じます。
例えば、病気に対しての恐怖感や辛さ、家に一人でいる時の孤独感、自分ってどんな存在なんだろうとか、自分はこんなに仕事もできない、家族の重荷になっているんじゃないかとか・・・言葉にしなくても、きっとさまざまな気持ちがあるのだと思うんです。
そんななか、私がその方自身の存在を肯定するような働きかけを心掛けることで、表情や、笑う回数や、コミュニケーションが変化してきて、少しずつ人間らしさを感じられるようになるときに、「あ、そうそう、これこれ!」と、私も嬉しくなります。大きなことではありませんが、私はお互いの心が少し温かくなるちょっとした場面がいいなと思います。

花穂さんがお仕事で心がけていることがあれば教えてください

安部:プラスの変化が生じるときもあれば、逆に突然亡くなってしまうこともあります。本当にそのときの彼女の思い、気持ちに対して自分が一番できることは何かというのを考えてはいますが、難しいです。答えはないと思いながら心掛けていることは、常にあなたの味方だよという気持ちになってもらえるように、30分に1回は絶対に一人ひとりに声を掛けることです。

看護面で言えば、ご利用者の普段の表情と、いつもと違うなと察知する力が一番大事だと思います。ある時、軽い心不全になられていた方がいらっしゃいました。その方は「全然大丈夫だから」と口では言うものの、サチュレーションが下がってきていて、食欲もどんどん落ち、体重も減っていました。すぐにご家族の方に報告をして、本人は「全然大丈夫なのに」と言っていましたが、病院に行ったところそのままICUで治療になりました。デイサービスにいる看護師として、一人一人の顔を見て今日も大丈夫かなと確認することはとても大切だと感じます。

ー介護士さんと一緒に働いていく上で何か心掛けていることはありますか。

安部:基本的に看護師は私一人で、あとは介護職員の方が7人ぐらいいらっしゃいます。看護師としての役割を意識することはあります。
例えば、私は毎日いるわけではなく、週に2回くらいの出勤なので、その間に少し気になる変化があれば、いつもこうなのか、今日だけなのかを介護職員の方と情報交換します。「歩き方が少しふらついていますが、普段もこうですか?」といった具合です。
あとは、お風呂の場面。介護職員の方が身体を洗って全身状態を見ますが、何かあればすぐに私に連絡が来ます。少し皮がむけていたり、血が出ていたり、湿疹が出ていたり…簡単な処置をすることもあれば、こけましたと連絡があればバイタルを測って受診の要不要を確認することもあります。

ーいつもいらっしゃる介護職員の方とうまく連携されているんですね

安部:そうですね。あとは、基本的に介護職員の方が車で送り迎えをする際に介護職員の方がご家族の方にお会いすることもあるので、ご家族の対応や病院にすぐに連れて行ってくれそうかどうかなどを聞き、生活状況に合わせたケアの提案もしています。

最後に、現役の看護学生に伝えたいことがあれば教えてください

安部:私が学生の時は看護師になることが目標だったので、なぜなりたいのかという根本的なところを曖昧にしてしまっていたことが一番よくなかったと自分では思っています。訪問看護やデイサービスなどにも視野を広げ、いろいろな就職先の選択肢があればもう少し違っていたかもしれません。学生さんには、自分が成し遂げたいことを考えたり、自分のやりたいと思えることが実現できる場所はどこかを考えたりしてみてほしいです。

自分のやりたいと思えることを考えるには、実際に働いている看護師さんのお話を聞いてみてください。病院なら病院、デイサービスならデイサービス。それぞれの現場のリアルな声をもっと見聞きしておけばよかったなと思っています。もっと具体的に想像できるようなものに触れる機会があるといいですよね。

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