看護学校に行くための学費を安く抑えたい人は少なくないのではないでしょうか。今回は、看護学生が活用しやすい奨学金の種類と、利用にあたっての注意点についてご紹介していきます。奨学金はお金を借りることであることを理解して、一人ひとりの看護学生が楽しく学びある学校生活を送るためのヒントをお届けします!
今回の記事はこんな人におすすめ!
- これから看護学校に進学しようとしている中高生
- 奨学金の申請を検討中/検討したことがある学生
- 今、奨学金を借りている学生
看護学生が使いやすい奨学金の種類
奨学金には大きく2種類があります。
奨学金の返還が必要な『貸与型』 (条件を満たせば、返還が免除される場合もある)
奨学金の返還が不要な『給付型』(条件付きで、返済義務がない奨学金)
貸与型奨学金のメリット・デメリット
貸与型奨学金のうち、病院の奨学金は慎重に選ぼう
病院をはじめとする医療機関は看護職の確保に奔走しています。看護職を確保するため、病院などが学生の奨学金を肩代わりすることで、人材を確保する動きが一般的となっています。
病院の奨学金は、「看護学校を卒業後、一定期間、指定の病院で働いてくれるならば(俗にお礼奉公と呼ばれます)奨学金の返済を免除するよ」という契約に基づくものです。貸与金額は病院によって異なりますが、毎月5万円程度の病院が多く、看護専門学校(3年制)なら年間180万円、看護大学(4年制)なら年間240万円を借りることができる計算です。
ただ、借りやすい貸与型奨学金だからこその注意点があります。先にご紹介したデメリットの部分です。
奨学金の一括返済が求められることも
奨学金を何年も返し続けていることを負担に感じている社会人のニュースをみたことはありませんか?奨学金を借りた総額によって、返済額と返済期間は決まります。さまざまな例が集まる知恵袋も参考になるので、興味のある方は読んでみてください。
また、病院の奨学金のように条件付きで返済を肩代わりしてもらう場合は、やむを得ず契約に反するときにも、一括返済を求められる場合があります(病院や事情により対応はさまざまのようです)。
例えば…
就職後、健康上の理由で退職することになった場合
一定の期間に満たないうちに転職する場合
決められた病院に就職せず、他の病院に就職したい場合 など
実際に、「指定された病院に就職→忙しすぎる職場の雰囲気・看護に疑問をもち、退職を決意したケース」で、奨学金を急ピッチで返済した看護師さんの体験談も取材しました。
一方で、返済が免除された看護師さんもいらっしゃいます。
進路の選択肢について考えよう
「病院の奨学金を借りていたけど、やっぱり助産師の資格を取るために進学したい」と考え、先生や進学先、病院と話し合いを続けてやっと進学した看護師さんもいらっしゃいます。この進学は、学校と病院の関係性によっては不可能だったかもしれません。
学生生活を送るなかで、自分の進みたい方向性がどのように変わるかは誰にもわかりません。看護職の活躍の現場の多さや、さまざまな看護のあり方を知ることで、自分の学びたいこと・進みたい方向性に悩むことは一人の人間として必要な成長過程です。考える過程で、病院の奨学金の存在が障壁になることがしばしばあるため、しっかり考えて奨学金を選ぶことが大切です。
選択肢を広く残す意味では、地方自治体の奨学金の方が、縛りが「特定の病院」ではなく「地域」に限定されるため、比較的選びやすいかもしれません。
給付型奨学金のメリット・デメリット
給付型奨学金の難しいところは、奨学金を申請するためには「住民税非課税世帯」及び「それに準ずる世帯」でかつ「優秀な成績を修めている」という条件が求められるものが多いことです。大きな財団が募集している給付型奨学金もありますが、求められる能力が高いなど、審査が厳しいものもあります。
看護学生の奨学金 メリット・デメリットまとめ
奨学金の特徴によって、利用しやすさと学生にとってのメリットの大きさは反比例します。
利用しやすさは…
一方、お得さ(学生にとってのメリットの大きさ)は…
このようになると考えられます。病院など各種医療機関が出している奨学金が学生にとってメリットになるかどうかは、個人によると思います。使いやすいことには理由があることを認識して利用しましょう。
看護学生が使いやすい奨学金の探し方
今までご紹介してきた奨学金のメリットやデメリットを知った上で、「やはり自分には奨学金が必要だ」という方は、探し方の参考にしてみてください!
看護専門学校、大学
附属の病院や系列の病院への就職を約束する奨学金を用意していることがあります。各学校ホームページで確認できます。また、大学ではしばしば成績優秀者の授業料を免除・減額する仕組みがあったり、成績上位の学生にご褒美がある大学もあるのだとか。
特殊例)
私立大学でも、学費の貸与制度でかなり学費を抑えられる産業医科大学
学費は無料、国からお給料をもらいながら学ぶ防衛医科大学
地方自治体
- 都道府県の社会福祉協議会による生活福祉資金貸付制度(教育支援資金)
- 福祉・医療分野の奨学金(修学資金)
が代表的です。いずれの修学資金も卒業後、地方自治体で所定期間以上の勤務をすることで、貸与された学費は返還免除となります。ただし、資格が取得できなかったり、勤務年限が不足したりすると、返還しなければならない場合があります。
問い合わせ先:1)居住地域の市町村社会福祉協議会 2)各都道府県庁、各市区町村役所など
例:新潟県https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/ishikango/1356788496540.html
日本学生支援機構
支援の対象となる大学・短大・高専・専門学校一覧で、自分の在籍している学校/進学予定の学校が当てはまるかどうかを確認してみましょう。
貸与型はもちろん、2020年度から給付型の奨学金も取り扱っています。進学資金のシミュレーターで自分が受け取ることができる奨学金について調べることもできます。
金利:年0.1%~年0.5%
日本政策金融公庫(国の教育ローン)
国の教育ローンは、保護者に対して、入学金、学校納付金などの入学費用や、授業料、通学費などの在学費用を融資する制度です。「日本学生支援機構」の奨学金制度との併用が可能で、一般的な教育ローンよりも金利が低いことが特徴です。
金利:固定金利1.65%(*2022年2月現在)
日本看護協会
准看護師であり、看護師学校2年課程(通信制)に在籍する方を対象にした奨学金を運営しています。その他、専門看護師や認定看護師資格取得のための奨学金もあります。この記事を読む方のなかには、将来的に利用する方もいるかもしれませんね。
まとめ
- 基本的に奨学金は借金です。
- 学生生活を送るなかで、自分の進みたい方向性がどのように変わるかは誰にもわかりません。進みたい方向性を考える過程で、病院の奨学金の存在が障壁になることがしばしばあるため、しっかり考えて奨学金を選ぶことが大切です。
病院の奨学金を受けることで「就職活動をしなくてよくなる」ことをメリットとして語られることがあります。しかし、本当に就職活動をしなくてよいことがメリットになるでしょうか。看護職はまだ売り手市場が続きます(就職に困らないということです)。学費の工面が相当困難な方を除いて、病院の奨学金については慎重に検討することが、将来を豊かに切り拓いていくために必要なことなのではないでしょうか。
今、病院の奨学金を活用している学生さんは、自分らしく働ける場所を見つけていくためにも「どうせ就職先は決まっている」ではなく、「まずはその場所で何を学んでいきたいか」「その先ではどんな看護師さんになろうかな」と考え続けることが大切だと思います。
奨学金について誰に相談したらいいのか分からない、
どうやって自分が進みたい方向を考えたらいいのか分からない
という方は、看たまノートに関わる学生・社会人の方々と一緒に考えていきませんか?
参考
進路ナビ:https://shinronavi.com/newcolumn/jiriki/02
文部科学省:https://www.mext.go.jp/kyufu/index.htm
日本政策金融公庫:https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/ippan.html
日本看護協会:https://www.nurse.or.jp/nursing/education/scholarship/index.html
コメント
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[…] 看護学生にとって身近な奨学金といえば、「病院奨学金」ではないでしょうか。病院奨学金は、一定期間指定された病院で働くことを条件に、病院が学費を肩代わりする仕組みをとっていることが多くあります。 […]