世界の医療事情【モンゴル編vol.2】 黒い空とごみの山

 モンゴルに来る前、専門家や知り合いのお医者さんに「モンゴルで健康上気を付けること」を伺いました。

 青年海外協力隊は、派遣前訓練で耳にタコができるほど健康管理について講話を聴きますが、主にアフリカや中南米を中心とした講話なので、正直北半球のモンゴルでは当てはまらないことの方が多いです。そこで、10名ほどにお話を伺ったところ、以下のようなことが挙がりました。

 【モンゴルで気を付けるよう言われたこと】 
1位 大気汚染による気管支炎 
2位 破傷風 
3位 凍傷 

1位 大気汚染による気管支炎 2位 破傷風 3位 凍傷

 実際、冬の首都ウランバートルに到着してすぐ、目と鼻で明らかに異常を感じるほど大気汚染が深刻です。私はマスクを2枚重ねて付けていましたが、帰ってきて耳や鼻を拭くとティッシュが黒くなることもありました。また、知人が気管支炎や肺炎になって治療を受けたという話もよく耳にします。ということで、前回は身近な風邪を例として、モンゴルの民間療法について書きましたが、今回は、モンゴルでの生活環境に注目してみようと思います。  

 大気汚染と聞き、中国の北京を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。しかし、最近の調査では、冬場はウランバートルが世界最悪であると言われています。

(参考資料:ユニセフHP、Newsweek:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/04/post-7316.php)  

 主な原因として挙げられるのは、首都周辺のゲル地区において暖を取るために有害な物を燃やしているからだそうです。ゲル地区は、近年、本来は遊牧をするためのゲル(移動式住居)を首都周辺に建てて定住するようになった住宅区のことです。遊牧をしている時は、木材や牛のふんを燃やしますが、首都圏に定住するとなるとたくさんの家畜は飼えなくなり、その結果、安く質の悪い石炭やタイヤ、手当り次第ごみを燃やすようになりました。高台から見ると、街の各所から昇る黒煙の柱やどんよりと霞んだ景色が広がっています。

 夏には美しい夜景や星空も楽しむことができるモンゴルですから、冬場の大気汚染は本当に残念です。

 先日、ごみの処分についても気になって首都の最終処分場の見学に行ってきました。首都に3つある処分場の内、一番西のところに行ってみると、そこはゲル地区、つまり民家の真ん中にある山のくぼみに埋めていくスタイルでした。2年前に家畜は入れないように柵が取り付けられましたが、ウェストピッカーと呼ばれる人たちが(収入のために)金属類を手で拾ったり、所々でごみが燃やされたりしているのを見ました。ここに医療機関から持ち込まれた廃棄物も同じ場所に埋められています。

 日本でもごみ処理はまだまだ課題が多いですが、開発途上国ではなおさらです。首都以外でも、旅行で訪れたモンゴル各地でごみ問題の深刻化が見られました。割れたビンの破片やハエのたかる生ごみが多くみられます。

 私が一番怖かったのは、街に落ちているごみの中に注射器(針も)や使用済みの生理用ナプキンがまざっていることです。怪我はもちろん、感染症も怖いですよね。

 私は、モンゴルの地方の小学校で理科を教えていますが、環境教育を通して子どもたちと健康で安全な環境について考えていきたいと思いました。

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